H27年度では,(a) 高精度固液混相流モデルの開発および既往実験との比較検討,(b) 解像度可変型スキームのベンチマークテストのための水理模型実験の実施,(c) 解像度可変型スキームの開発を進めた.これらの研究を進める中で,以下の2点が重要課題として新たに浮上した.1)移動境界条件に対する流体挙動の再現性の向上,2)移動境界条件モデルの高精度化.H27年度は,この2点に加え,前年度の計画に則り,3)固液混相流モデルの高精度化および洗掘実験の再現計算を通したベンチマークテストを実施した. 1)H27年度に導入していたSPPスキームは,MPSの従来型カーネル関数にのみ対応する形式でモデルが構築されていた.そこでH28年度では,SPPスキームを高次型カーネル関数(Wendland kernel)にも対応した汎用型スキームとして改良を施し,移動境界条件に対する圧力擾乱の改善を図った.提案モデルの再現性の向上については,スロッシング現象を対象とするベンチマークを通して確認を行った. 2)先に導入済みの高精度自由表面境界条件モデルの応用から,移動・固定両境界条件に対応する高精度壁面境界条件モデル(WPPスキーム)を新たに構築した.本モデルを用いて,土石流の流動・堆積過程やダムブレイクを対象とした数値シミュレーションを実施し,WPPスキームによって圧力擾乱の抑制とともに計算コストが大きく改善をされることを既往の境界条件モデルとの比較から確認した. 3)津波に代表される構造物背後の越流水塊による局所洗掘を対象とする水理模型実験を実施し,併せて,開発した固液混相流モデルを用いた再現計算を実施した.本ベンチマークテストでは,実際の砂粒径に依存した洗掘現象の相似則が計算粒子径に対しても擬似的に適用可能であることを確認し,開発モデルの実務計算への適用に際しての基礎的な検討を進めた.
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