研究課題/領域番号 |
15K18130
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小嶋 文 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (40637998)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 交通事故 / 高齢者 / 運動・スポーツ / 交通安全 |
研究実績の概要 |
交通事故における高齢者の致死率の高さには、身体能力の低下が強く影響していると考えられるが、それら体力低下に関する個々人の特徴の違いが、交通事故の遭遇可能性、及び傷害の程度にどのように影響するのか、ということについては、研究がなされていない。本研究では、高齢者の運動履歴による身体能力の向上と、交通事故との関係に着目し、疫学的調査からその関連性を探り、事故防止及び重傷の度合いを低下させる運動について検討することとした。平成28年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 1.大規模アンケート調査の実施:前年度のヒアリング調査結果、及びヒアリング調査から得られたデータをもとに、運動を行っている高齢者、および運動を行っていない高齢者を対象として、WEB調査による大規模アンケート調査を実施した。アンケート調査の結果の分析からは、普段から運動を行っているグループでは、運動を行っていないグループと比較して、道路上を歩いているときに危険を感じたときに何らかの行動を取れるという回答が多いなど、運動の実施が交通事故の防止に影響している可能性が示唆された。また、ジョギング、テニス、登山といった運動を行っているグループが特に体力が高い可能性が示唆された。 2.歩行シミュレーターによる被験者横断実験:運動している高齢者と、運動をしていない高齢者の、道路の歩行時の行動特性について検証するため、歩行シミュレーターによる被験者実験を実施した。普段テニスをしている高齢者に被験者となっていただき、体の複数の部分マーカーをつけたうえで、歩行シミュレーター「渡りじょーず君」で自動車が通る道路の横断をしている様子を、高速度カメラで撮影し、歩行時の体の動きのデータを取得した。また、アイマークレコーダーを装着し、横断時の視線についてもデータを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、平成27年度において、高齢者ヒアリング調査をもとに、高齢者を対象とした全国規模の調査を実施し完了する予定であった。しかしながら、ヒアリング調査の実施過程において、人材センターへの依頼により「普段運動をしている高齢者の方」に来ていただき調査を実施した結果、実際には普段運動をしていない方が多く含まれており、再度、普段運動をしている高齢者の方を探していただき、ヒアリング調査を設定しなおす必要が生じた。そのため、ヒアリング調査の完了が遅れた。高齢者を対象とした全国規模の調査の実施においては、ヒアリング調査の結果をもとに調査の設計を行うこととしていたため、上記の遅れにともなって、遅れが生じ、平成27年度中の実施ができないこととなった。上記の理由により当初予定からは遅れたが、大規模アンケート調査は完了した。 また、歩行シミュレーターによる横断実験についても、運動をしていない高齢者の被験者の参加者を集めることに時間がかかることから、平成29年度の実施となる。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目となる平成29年度には、歩行シミュレーターによる横断実験について、運動をしていない高齢被験者の実験を行い、平成28年度に得られた、運動(テニス)を行っている高齢者の被験者のデータと比較することで、運動(テニス)が、事故防止や事故時の身体損傷の軽減に及ぼす影響について検証する。また、平成29年度が研究最終年度となることから、過年度に実施した高齢者ヒアリング調査、大規模アンケート調査の結果と合わせた研究取りまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、平成27年度において、上述した高齢者ヒアリング調査をもとに、高齢者を対象とした全国規模の調査を実施し完了する予定であった。しかしながら、ヒアリング調査の実施過程において、人材センターへの依頼により「普段運動をしている高齢者の方」に来ていただき調査を実施した結果、実際には普段運動をしていない方が多く含まれておりヒアリング調査の完了が遅れた。高齢者を対象とした全国規模の調査の実施においては、ヒアリング調査の結果をもとに調査の設計を行うこととしていたため、上記の遅れにともなって歩行シミュレーターによる被験者実験に遅れが生じた。さらに、歩行シミュレーターによる被験者実験では、運動をしていない被験者の募集に時間がかかることとなり、それに伴って、研究成果の公表も平成29年度に繰り越すこととなり、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画どおり、運動をしている高齢者、および運動をしていない高齢者の交通事故に関わる行動の観測にかかる被験者実験に使用する。また、研究成果の公表にかかる費用として支出する。
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