本研究の目的は,ナビゲーションシステムの高度化に向けて必要となる,車線単位の所要時間分布の推計システムとして,所要時間蓄積データを直接利用する粒子フィルタの適用による数分程度先の予測を行うことである. 初年度に名古屋市中心部の市販タクシープローブデータを購入し,リンク通過所要時間の蓄積データに関する検討を行った.その結果,所要時間分布は直進・右左折で異なり,蓄積データベースとしてはこれらを区別することが有用であることを確認した.本年度は所要時間予測手法として粒子フィルタの適用・改良を行い,5秒毎のデータ補完を行いながら蓄積データの更新方法を検討した.一般道路を対象とするため,プローブデータのみからの信号現示パターン推計を目指し,交差点の追従関係だけでなく,横断車両の通過実績データも利用する方法を提案し,有効性を確認した.また,推計された信号現示パターンを用いることで,粒子フィルタによる所要時間予測の精度も向上することを確認した. 実際のタクシープローブデータはその普及率が低い.そこで,提案手法の有効性検証として,交通流シミュレータにて全交通車両に対するプローブカー普及率に応じた所要時間予測精度の感度分析を行った.その結果,追従関係や横断関係を用いるために予測対象車両数が変化するが(普及率100%で対象車両数は100%,普及率50%で対象車両数100%,普及率25%で対象車両数93%,普及率10%で対象車両数78%),所要時間予測精度は評価指標MAPE(小さい程良い)で100%:32%,50%:32%,25%:39%,10%:36%となり,平均値を予測値とした場合はMAPEは55~60%となることから有効であることを確認した.
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