研究課題/領域番号 |
15K18140
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
西浦 泰介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 技術研究員 (60509719)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シミュレーション / 粘弾性体 / 片持ち梁 / 周波数解析 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
鉄道バラスト軌道は列車が通過する度に徐々に沈下するため、バラストの交換による定期的なメンテナンスが必要不可欠である。しかし、その沈下メカニズムは未だに良く解っておらず、実測およびシミュレーションによる研究が進められているところである。 本研究では昨年度までに、新しいシミュレーション手法としてQDEMを開発した。QDEMは、四面体要素の4頂点の情報のみから、要素応力を算出することができ、実際の材料特性をそのまま用いることができる。さらに,物体間に相互作用力を考慮することで多体運動の解析も可能である。また、連続体力学の構成式を四面体要素単位で陽的に解くため計算効率が良い。 しかし、これまでQDEMの精度検証は行われておらず、FEMと比べてどの程度の精度が有るのかが不明であった。そこで、QDEMの精度を検証するために、簡単な角柱の粘弾性変形解析を行い、FEMの結果および理論解と比較した。その結果、片持ち梁の弾性変形については、FEMと0.001%以下の相対誤差で、非常によく一致した。粘性減衰の影響については、振動の減衰やクリープリカバリー試験の理論解を良く再現することができた。以上により、本手法の高い信頼性が確認できた。 さらに、QDEMを用いて鉄道バラスト軌道の解析を行った。本年度はバラストおよび枕木の振動特性に着目し、実測値との比較を行った。実測では、枕木およびバラストに加速度センサを取り付けて振動を計測した。シミュレーションでは実測と同様の位置で振動計測を行った。その結果、実測と同様の周波数帯に加速度のピークが現れる現象を再現することに成功した。特に、これまで不可能であったバラスト層と枕木の共振により現れる振動周波数のピークを再現することに成功した。 今後は、さらにシミュレーションを大規模化し、線路方向に伝わる列車走行荷重による影響を明らかにし、研究成果のさらなる精緻化を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、粘弾性体に対する粒子法ベースのシミュレーション手法を開発し、鉄道バラスト軌道の解析を可能にした。そして、バラストと枕木の振動周波数特性を、実験及びシミュレーションによって解析し、両者の定性的な一致を確認することができた。また、GPU(Graphics Processing Unit)を複数使用した並列計算も可能にした。 したがって、当初予定していた研究計画通りに、順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初計画していた研究を発展させ、研究成果の精緻化を図るために、本シミュレーションのさらなる大規模化を行い、列車走行による線路方向への3次元的な衝撃荷重伝播によるバラスト軌道沈下挙動への影響を詳細に検討する。そのために、シミュレーションプログラムの改良を行い、並列化効率を改善することにより、複数のGPUを用いた大規模シミュレーションを実施する。 そして、信頼性が得られた大規模シミュレーションを用いて、バラスト軌道の沈下挙動と周波数特性の関係を解析し、バラスト軌道のメンテナンス回数を減らすために有益な知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
バラスト軌道のシミュレーションプログラムの高速化に成功したことにより、当初計画していた規模のバラスト軌道計算は既存のGPU計算機で効率的に行えたため、GPU計算機の追加購入を見送り、当初計画していたGPU計算機の追加購入費が生じなかった。また、論文を執筆し現在投稿中であるため、論文掲載に掛かる費用も今年度は生じなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、より大規模かつ多数の条件でバラスト軌道シミュレーションを行い、研究成果の精緻化を図るために、予定通りにGPU計算機の追加購入に使用する。さらに大規模シミュレーション結果と比較検証するための実験に必要な備品の購入に使用する。また、研究成果の発表に必要な学会参加費・旅費および英文校正と論文投稿料に使用する。その他、研究に必要な図書や資料の購入に使用する。
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