鉄道バラスト軌道は列車が通過する度に徐々に沈下するため、バラストの交換による定期的なメンテナンスが必要不可欠である。しかし、その沈下メカニズムは未だに良く解っておらず、実測およびシミュレーションによる研究が進められているところである。 本研究ではこれまでに、新しいシミュレーション手法としてQDEMを開発し、その精度検証を行ってきた。QDEMは、四面体要素の4頂点の情報のみから、要素応力を算出することができ、実際の材料特性をそのまま用いることができる。さらに、物体間に相互作用力を考慮することで多体運動の解析も可能である。また、連続体力学の構成式を四面体要素単位で陽的に解くため計算効率が良く、片持ち梁の弾性変形解析結果は、FEMと0.001%以下の相対誤差で良く一致し、非常に高い計算精度を有していることが確認できた。さらに粘性減衰の影響については、振動の減衰やクリープリカバリー試験の理論解を良く再現することができた。 そして本最終年度は、FEMにより列車の走行にともなう車輪からの衝撃荷重を計算し、その結果を入力荷重とすることで、バラスト軌道全体の衝撃応答解析を行えるFEM-QDEM連成解析手法の開発を行った。その結果、解析的に得られる枕木やバラスト層の固有振動モードを本手法によって再現することに成功した。さらに、複数GPUを用いた大規模並列化コードの開発を行い、枕木の本数を昨年度までの4本から24本を含む計算領域まで拡充することに成功した。その結果、これまで調べられてこなかったバラスト軌道の3次元的な挙動を詳しく知ることが可能になった。特に、列車の加速方向や進行方向もバラストの運動に影響することを発見し、線路方向に対してバラスト軌道の沈下割合が均一では無い原因を明らかにすることができた。
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