地球温暖化対策として、海洋生態系によって海中に吸収・固定される炭素「ブルーカーボン」が注目されており、干潟などの湿地においても新たな生態系機能として炭素循環に関する研究が行われている。本研究は、都市沿岸に存在する人工干潟のCO2動態を対象として、干潟と大気間におけるCO2交換量を評価するとともに、どのくらいのCO2が基礎生産者によって吸収されているのかを評価することを目的としたものである。 大阪南港野鳥園北池において、2カ月毎の植物プランクトンの現存量調査と植物プランクトンの光合成実験を実施した。光合成実験では、明暗瓶法により培養温度、光量、時間を変化させて実験を実施し、植物プランクトンのChl.a当たりの炭素吸収量を光量子と水温の関数で、海水中の呼吸・分解量を水温に依存する関数でモデル化した。また、このモデル式を基に現地調査結果から大気-海水間の炭素交換量と植物プランクトンによる炭素の吸収量を推定した結果、大気からの取り込み量は植物プランクトンの吸収量に比べて小さく、両者の空間分布や季節変化には相関がみられなかった。さらに、大気海水間のCO2収支と植物プランクトンの吸収量の日変化を比較した結果、野鳥園北池の炭素変動に最も支配的な要因は海水交換であり、干潟の炭素収支における植物プランクトンの寄与は1から3割程度と見積もられた。これらの結果から、野鳥園北池における炭素吸収は、本研究では評価していない大型藻類や底生微細藻類の寄与が大きいと考えられた。
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