平成29年度は、平成28年度に構築したグリーン関数データベースに基づく長周期地震動作成システムの改良と機能拡充を行った。このシステムは、グリーン関数の相反性を利用した有限差分法により計算されたグリーン関数を重ね合わせることにより地震動の長周期成分を合成するものであるが、これに短周期成分を付加する機能を追加した。これは、統計的グリーン関数法により地震動の短周期成分を計算し、長周期地震動作成システムの出力結果と適切なマッチング周期をもって組み合わせるというものである。 また、平成28年4月1日に発生した三重県南東沖の地震について、収集した強震記録を整理し、中京都市圏の地盤震動性状に関する知見を得た。この地震は、将来の発生が危惧される南海トラフ巨大地震と震源域およびメカニズムが同一であるため、南海トラフ巨大地震の地震動を予測する際に重要となるものである。本研究課題においては、この地震による地震動記録を予測に活用するにあたって必要となる震源パラメータを同定した。 さらに、平成28年4月14日以降断続的に発生した熊本地震を受けて、断層近傍での地震動に見られるフリングステップを精度よく検出する手法を考案し、将来の活断層地震の地震動予測の際に必要となる震源モデルの構築に資する結果を得た。 これらの成果は、日本建築学会構造系論文集・日本建築学会2017年大会・日本建築学会東海支部研究集会において発表した。
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