間柱型耐震壁は,設置位置の自由度が高く開口部の多い建物の耐震改修に適しているが,その性能は既存建物の柔性と耐力の影響を大きく受ける。そこで,本研究では,既存建物と間柱型耐震壁の相互作用を考慮した簡便で実用的な耐震改修設計手順を確立することを目的とする。 最終年度である平成28年度は,まず,木パネルで面外補剛したスリット入り鋼板耐震壁単体の動的載荷実験を行い,載荷速度の影響を調査した。載荷は神戸大学所有の水平一軸振動台を用い,耐震壁の上端を反力フレームに緊結し,下端を水平一軸振動台に固定して,振動台を動的アクチュエータとして利用した。実験結果より,載荷速度の違いが耐震壁の挙動や履歴性能に与える影響はほぼ見られず,既往の静的載荷実験の結果と概ね一致することを確認した。また,この動的載荷実験結果をもとに耐震壁の動的特性の影響を考慮した履歴モデルを作成し,このモデルを用いて,4層4スパン骨組および10層6スパン骨組の時刻歴応答解析を行い,一般化した間柱型耐震壁の設計手順の有効性を検証した。さらに,間柱型耐震壁の配置を変数とした解析を行い,耐震壁の効率的な配置方法と応答低減効果を確認した。 以上の検討より,間柱型耐震壁のエネルギー吸収性能を最大限発揮させるための,信頼性の高い設計手順が新たに導出できた。木パネルで面外補剛したスリット入り鋼板耐震壁を間柱型耐震要素として使用することで,低コストで短工期の簡易な耐震改修が可能となり,集合住宅や学校など開口の多い中低層建物の耐震改修が促進される。
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