研究課題/領域番号 |
15K18156
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺本 篤史 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30735254)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高強度コンクリート / 自己収縮ひずみ / 膨張材 / 収縮低減剤 |
研究実績の概要 |
本研究は,膨張材や収縮低減剤といった混和材料を使用してコンクリートの自己収縮によるひび割れを低減する現状の技術をより高度化することを目的としている。 平成27年度においては,水結合材比が16.5%のセメントペーストという自己収縮ひずみが極めて大きい調合を対象として,膨張材および収縮低減剤がどのように自己収縮低減に寄与しているかを明らかにする実験的検討を実施した。この際,セメントペーストの体積変化には,セメントおよび膨張材の水和による水分消費を駆動力とする自己収縮ひずみと,膨張材から生成される膨張性水和物の生成に起因する膨張ひずみが同時に計測される。そこで本研究では,膨張ひずみ成分を抽出することを目的に,水分消費による自己収縮ひずみが水和圧理論に基づくと仮定して自己収縮ひずみ量を算出し,膨張ひずみ成分を抽出した。 上記の手順で求められた膨張ひずみ成分と,膨張材の膨張駆動力と考えられている,エトリンガイト,水酸化カルシウムという水和生成物の生成量の変化を比較すると,ある材齢以降において膨張材を起源とする水酸化カルシウムが収縮低減について支配的であることが確認された。 この材齢は,水和生成物の一つであるエトリンガイトが生成ピークを迎える材齢と対応しており,エトリンガイトが他の水和物へ転移していく段階以降では水酸化カルシウムが膨張量を決定する因子であると考えられた。一方でエトリンガイトがピークを迎える材齢は,養生温度や収縮低減剤の混和の有無によって異なり,その条件を導出するまでには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来の計画では,膨張材の膨張効果に及ぼす骨材量の影響に関する検討を実施する予定であったが,セメントペースト単体の実験において,水和生成物を定量する手法を確立することに多大な時間を要し,上記の骨材に関する検討を行うに至らなかった。 しかしながら,本年度予定している研究と骨材影響の研究は,設備的に同時進行が可能な内容であるため,平成28年度中の目標達成は十分に可能な範囲内である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は主として,セメントペーストが硬化する期間において,膨張材が収縮低減に及ぼす影響を精査するものであった。 平成28年度は,上記の内容と並行して,コンクリートが十分に硬化したあとに生じる膨張材の反応に主眼を置く。この“遅れ膨張”はコンクリートに有害な膨張と言われており,ポップアウトなどの重大な劣化をコンクリート構造物に生じさせる可能性がある。 遅れ膨張の原因としては,未反応の膨張材が,雨水など外部から供給された水と反応して,コンクリート内部に膨張圧を発生させるためといわれている。しかしながら,現状では,どの程度の未反応膨張材が有害であり,どの程度の水が供給された場合に発生するのかといった,実務に直結する情報はほとんど得られていない。平成28年度の検討では,水和反応解析によって膨張材の反応量を経時的に把握することで,有害な遅れ膨張が発生する条件を明示することを目的とする。
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