最終年度(平成29年度)は,鋼・コンクリート合成構造における高強度接合法の実現に向けて,2016年4月に発生した熊本地震のような巨大地震が極めて短い期間に続けて発生する状況や近年問題とされている長周期地震動による大振幅多数回繰返しに対する検討などを鑑みて,当初計画していた繰返し回数を上回る回数(同振幅を100回)を実施することを目的に,昨年度(平成28年度)に引き続き「地震時挙動を考慮した高強度接合の構築」を中心とした実験的検討を実施した。さらに,既存の鉄筋コンクリート造建物,とくに,コンクリート強度が低い建物を対象とすることを目的に,コンクリート強度がこれまで実施してきたものより低いものを対象として実験を実施した。 実験変数は,「アンカー筋ピッチ」と「載荷方法」である。アンカー筋ピッチは,10da(daは鉄筋径),5da,3daとした。載荷方法は,1)単調載荷,2)単調載荷による最大耐力(Qsmax)の1/3となる応力で正側に載荷と除荷を100回繰返した場合と,3)Qsmaxの2/3となる応力で正側に載荷と除荷を100回繰返した場合の合計3種類とした。これらの実験結果に基づき,アンカー群効率(あと施工アンカーを1本のみ配置した最大せん断耐力に対するあと施工アンカー筋を複数配置したときの1本当たりの最大せん断耐力の比),繰返し耐力低下率,累積残留変位などについて検討した。 設計法に関連して,上記実験結果とこれまでの実験結果を基に,既往の最大耐力算定式による評価方法を検討した結果,アンカー筋のせん断破壊(アンカー筋破断)については,概ね評価できることを確認した。さらに,昨年度から継続して行っている解析的検討では,不足する実験結果を補うため,有限要素法による数値解析モデルの構築を実施した。
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