本研究は、ウレタン塗膜防水において最も重要である、適切な膜厚を確保するための条件を、施工のしやすさも加味しながら提案することを目的としている。 平成27~28年度は、施工段階の様々な要因が膜厚と施工性に及ぼす影響を把握するため、各条件下における防水層の物性試験と、各条件で施工した際の膜厚と施工性の把握を行った。これらの試験結果を基にした最適な施工条件の提案を行うため、施工具を動かす速度をせん断速度とみなし、レオロジーの観点から防水材の流動曲線を調べた。その結果、平場部に使用する防水材に比べ立上り部に使用する防水材はチクソ性の強い材料であり、せん断速度即ち施工具を動かす速度が、せん断応力即ち職人が施工具から感じる荷重に及ぼす影響が大きいことを示した。 この結果を踏まえ、施工具を動かす際に発生する荷重測定を行った。自作した荷重測定装置を用い、6段階の粘度と3種類の施工具を対象に測定を行った。測定された荷重曲線より得られる各物理量と、施工性の対応関係を検討した結果、荷重曲線より得られる仕事量は、粘度の増加に伴い増加するが、その増加割合は施工具により異なり、また仕事量と施工性の間に、良い対応関係が得られるか否かも施工具により異なる事を示した。即ち施工具により、仕事量が施工性に及ぼす影響の主要因となっている物もあれば、防水材を思い通りに扱えるか否かの感覚が主要因となっている物がある事を意味している。 以上の結果を総括し、適切な膜厚を確保するための粘度と施工具の組み合わせを示した。 平成29年度は、これらの結果を国際会議で発表し、本研究の成果に関する原著論文の執筆を行った。
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