近年、事業継続性(BCP)や耐震安全性確保の観点から、免震構造を採用する建物が増えており、2011年に発生した東日本大震災において、免震構造は高い耐震性を発揮した。免震構造への社会的ニーズは、急激に高まっており、様々な種類の免震装置が開発され、それらを組み合わせることで適切な設計が行われている。しかしながら、今後、想定されている長周期・大都市直下の極大地震は、これまでの設計レベルを大幅に上回る。さらに、免震構造の超高層化に伴う風荷重の増加により、風の影響を受けやすくなっており、耐風設計が問題視されている。そこで本研究では、実験ならびに解析的検討により、巨大地震や強風発生後に、免震装置に生じる「残留変形」および「回復性状」を明確にし、高性能な建物を実現するための設計時の指標として資するデータを提供することを目的とした。 4年目である平成30年度は、平成28年度に計画した実験をすべて実施するとともに、地震応答解析結果とを比較検討し、入力波形、特に巨大地震・強風時における免震装置の復元力特性について、新たな評価手法や簡易予測指標を提案し、地震応答解析結果を用いて再検証することにより、その妥当性を定量的に示し、実務構造設計時における免震装置の検討に対して大きな助けとなる資料を提示した。
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