研究課題/領域番号 |
15K18165
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
李 孝振 東京大学, 新領域創成科学研究科, 研究員 (70747641)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 音・振動環境 / 数値解析 / 拡散体 / 乱反射率 / 指向拡散度 |
研究実績の概要 |
本研究では、音響設計の際の目安となる壁面の拡散性指標を導入し、汎用的な拡散性能定量化システムの構築、拡散メカニズムの把握を通して拡散壁の高性能化方法の検討を、模型実験・数値解析を通して行うことにより、最適拡散壁の開発を実現することを目的としている。初年度は、研究計画における第1、2段階に着手し、効率的かつ汎用的な数値解析システムの構築について、以下の課題群に取り組んだ。 課題1a:博士研究において構築した乱反射率の数値解析プログラムをベースに、計算負荷・簡便性などの面から効率化させた乱反射率の数値解析プログラムを構築した。 課題1b:改善させたプログラムの妥当性を縮尺模型残響室における測定結果との比較により、予測精度を検証した。 課題2a:課題1群で構築した乱反射率の数値解析プログラムを土台に、新たな指向拡散度の数値計算アルゴリズムを境界要素法を用いて構築した。 課題2b:課題2aの数値解析プログラムについて、計算パラメータの適用条件が計算結果に与える影響をケーススタディにより検討し、適切な設定条件を導いて予測手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、第1、2段階の乱反射率及び指向拡散度の数値解析プログラムの構築に関する各々2つの課題に取り組み、課題1群の乱反射率については、計算時間を4 kHzで4時間(要素数:6万程度)まで短縮させた。ISOの残響室測定法による結果との比較を通して、計算精度を検証すると共に、入射角依存性を考慮した新たな実験室測定法を計算結果との比較を通して構築した。一方、課題2群の指向拡散度については、遠方場条件の確保や多数のインパルス応答計測が必要となることから実験の実施には至らなかったが、数値解析アルゴリズムを構築し、数値解析における計算パラメータの適用条件を明らかにした。2 kHz までの数値解析では、周波数離散化幅を 1/12 Oct. band 毎、入・反射角を 3 度以下に設定することで予測精度が確保されることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度では、第3段階の壁面の音響拡散特性の最適化に関する2つの課題として、課題3a:乱反射率及び指向拡散度データベースの整理、課題3b:最適拡散壁の開発を予定している。これまで構築した測定・解析システムを利用し、拡散壁の設計、試作の制作・評価を行い、散乱性能の広帯域化と製作性・設置性を考慮した拡散体ユニットの開発を目指す。
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