本研究では、音響設計の際の目安となる拡散性指標を導入し、汎用的な壁面の拡散性能定量化システムの構築、拡散メカニズムの把握を通して拡散壁の高性能化方法の検討を、模型実験・数値解析を通して行うことにより、最適拡散壁の開発を実現することを目的としている。第2年度は、主に研究計画における第3段階に着手した。年度のはじめに既往文献の調査を行い、適切な壁面形状を選定した上で、これまで構築した測定・解析システムを利用し、最適拡散壁の設計、試作の制作・評価について、以下の課題君に取り組んだ。 課題3a:ここまでに構築したシステムを用いて、音響拡散指標のデータベースを整備した。拡散壁の表面形状を系統的に選定してモデリングを行い、各種壁面の拡散メカニズムを把握するとともに、拡散壁の設計方針を提案した。また、乱反射率と指向拡散度の関係性も明らかにした。 課題3b:壁面の拡散性能を最適化させた拡散壁の設計を行った。円柱やリブ周期構造壁等などの典型的な拡散壁にとどまらず、意匠的にも特色を持つ新たな拡散壁を測定・解析システムを用いて開発した。物理学者のロジャー・ペンローズが考案したペンローズ・タイルを応用したデザインパターンを用い、その二次元平面を三次元に拡張した非周期拡散壁を設計した。それは、黄金分割比を基調とする二種類の菱形により作られた平面充填形で、5回軸対称性をもちつつも非周期的である特性を持っている。さらに、散乱性能の広帯域化と製作性・設置性を考慮した拡散体ユニットの開発も進めた。
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