本研究は高信頼性を有する波動音響解析を駆使し、微細穿孔板(MPP)と通気性膜を用いた次世代吸音体を有する建築の音環境予測技術を構築するとともに、室内音響設計指針の確立を目指すものである。研究最終年度である平成28年度は、前年度に構築した次世代吸音体を有する室内音場の予測技術を3次元解析へと拡張し、実大の建築音場解析を通して、数種のMPP・通気性膜吸音体のin-situでの吸音性能を評価した。さらに、より高性能な通気性膜吸音体について数値的に検討した。具体的な研究成果は下記の通りである。 1.次世代吸音体を有する室内音場の3次元FEM技術の開発:MPP吸音体を有する室内音場の3次元周波数領域FEM解析技術と、通気性膜吸音体を有する室内音場の3次元時間領域FEM解析技術(陰解法・陽解法)を開発した。理論解との比較が可能な音響管問題を対象に精度を検証し、従来の吸音モデルである表面インピーダンスモデルとの比較により開発手法の有効性を提示した。また、背後ハニカム構造のMPP吸音体を対象に、理論モデルとin-situ測定値の比較を行い、その妥当性を示した。周波数領域手法については、当初予定していなかった多周波数応答解析を効率化するための線形方程式の解法を選定し、CSQMOR法が効果的なソルバであることを明らかにした。 2.実大建築音場解析による次世代吸音体の吸音性能評価:単一MPP・通気性膜天井吸音体ならびに背後ハニカム構造を有するMPP吸音パネルを対象にin-situでの吸音性能を評価した。また、MPP吸音パネルについては、吸音体配置と得られる吸音効果の関係について検討した。 3.高性能な吸音構造の開発:従来の単一通気性膜吸音体の短所である特定周波数でのノッチを克服するための通気性膜吸音体アレイを考案し、周波数領域有限要素解析により、その吸音特性と吸音メカニズムを明らかにした。
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