本研究は,パッシブ/アクティブにコントロールした居住環境および在室者の熱的快適性も含めた性能評価を目的として,空調機器などの熱源の影響を考慮できる多数室の非定常熱計算ソフトの開発を目的としている。 平成29年度は,空間ゾーンへの空調気流の影響を考慮するために,空間および壁面を細分割できる数値シミュレーションソフト(Energy simulation(以降,ES))と気流解析(CFD)を連成するアルゴリズムを追加した。エアコン気流による空間への熱量の分配については,吹抜けを有する実験住宅を対象に,空調の設置位置や吹出角度,建物の断熱性能による影響について検討した。ただし,完全拡散と仮定するESではエアコン気流による熱量の分配は考慮できないため,CFDにより空間各ゾーンへの熱量分配率を算出した。CFDにより算出した各ゾーンの熱量分配率に空調機の投入熱量を掛け合わせてESに連成させることで,簡易に空調気流の影響を再現した。その結果,熱量分配率を考慮した数値シミュレーションにより,非定常に吹抜けの上下温度分布を精度よく予測することができることを確認した。また,空調機器の配置の違いによる建物全体の温度分布性状を算出し,空調機の配置検討に有効な解析手法であることを示した。さらに,対流空調および放射空調を併用した場合の建物断熱性能および運転方法について,特に冬期において居住者の足元空間の快適性向上が見込め,十分な断熱性能を備えていれば省エネルギー効果も期待できることを明らかにした。
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