自然通風には心地よい周波数成分とされる「1/fゆらぎ」と呼ばれる変動特性があるが、科学的な根拠は不明である。そこで平成28年度の研究では矩形波変動風環境における気持ちよさ評価を測定するために,通風型人工気候室を用いた被験者による主観申告実験を行った。また展示住宅における実測を行い、自然通風環境における気持ちよさ評価を測定することが目的である。 被験者には全身の心理量について申告させた。気持ちよさ評価は気持ちよい側の4段階(3:非常に気持ちよい、2:気持ちよい、1:やや気持ちよい、0:そうではない)を目安として被験者に無段階で申告させた。気温は日本の夏を想定して28℃と32℃の2パターンとした。風速の変動波形は矩形波とした。変動周期は2分、10分および30分の3パターンで合計6ケースとした。風速の変動は気流感を得るために最小風速を0.1m/s(静穏)、最大風速を1.0m/sとした。 最も気持ちよさ評価が高かったケースは気温32℃、変動周期10分のケースで1.3であった。一方、同じ変動周期10分でも気温28℃のケースでは気持ちよさ評価の平均値が1.0であった。したがって、ゆらぎのような特定の変動周期を持つ自然風が必ずしも高い快適性を生じさせるとはいえず、高い快適性を得るための風の変動特性は他の温熱環境の影響を受けると考えられる。また60分間の平均値が高かったケースは気持ちよさ評価の超過確率が異なる傾向を示し、気持ちよさ評価を高く・長く維持するような風速と周囲環境が重要であることが分かった。 また、通風性能に配慮して設計された住宅展示用パビリオンで実測を行った。本年度の実測では天候が悪く、被験者は寒いと申告しており、風による気持ちよさ評価は得られなかった。しかし、気温が低い場合は通風による気持ちよさが得られないということがわかり、実験室で得られた実験結果の妥当性を示すことができた。
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