本研究は、集合住宅での孤立化防止に効果が期待されるリビングアクセス型住宅がコミュニティ指向性とプライバシー等を両立しながら、成立するための空間構成要素の条件を提示することを目指したものである。調査は、図面分析による空間構成の特性把握と、居住者へのアンケート調査および、住まい方の実態調査を行った。図面分析では、リビングアクセス型住宅を定義したうえで、我が国でこれまでに取り組まれた実例の図面から、その構成を類型化し、フロンテージとの関係をみた。そこからは、フロンテージによって可能なリビング・水周り・個室の配置が異なり、タイプごとにリビングの縦長比の閾値があること、フロンテージの限界値があることを明らかにした。居住者への調査は、東日本大震災被災地の3自治体を対象とした。アンケート調査では、近所付き合いにリビングアクセス型住宅とそうでない住宅で差があり、特に近所の人との顔合わせの場所や外部への表出物に差があることが認められた。さらに、住まい方調査では間取りや開口面の仕様だけでなく、敷地に対する建物の配置や住棟間の関係が、リビングアクセス型が有効に成立する条件となっていることが確認できた。本研究の結果から、リビングアクセス型住宅の成立のためには、敷地への対応、隣棟間隔と住戸の向き、フロンテージとそこから導き出される間取りの組み合わせが重要であることがわかった。中間領域の形成にあたってはこれらの関係から大きさや素材などを適切に選ぶ必要がある。なお、他住宅や被災地で参考可能な資料をまとめることも目標の一つであったが、平成28年度には研究成果を元に、「集合住宅の新しい文法―東日本大震災における災害公営住宅」をまとめ、広く知見を公表している。
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