本研究は、日本における戦災復興区画整理地区とその周辺地区における再基盤整備事業を対象に、そこでの再基盤整備に至る更新型都市計画事業の史的分析を通じたストック評価を行うことを目的としている。初年度は、俯瞰的把握として、戦災復興事業実施都市における戦災復興事業(1946 年-)、都市改造区画整理(1956 年~)、防災建築街区造成事業(1961 年~)といった戦後初期における基盤整備事業の総覧を作製して、事業の連続性などを把握した。 この総覧を元に、本年度は個別に調査する都市を選定し、これらの戦災復興期に形成された都市基盤が現代に至るまで、どのような都市空間を生み出したか変遷を量的(人口・DID や建築密度など)・質的(空間構成、構造把握)などから分析をおこなった。 対象都市では、戦災復興事業を基盤として、駅を中心とした中心市街地の基盤造成が戦後進められた。これらの都市は駅が従前からの中心市街地側に展開した基盤整備であることが多く、高度成長期以降には駅の反対側(旧貨物ヤード側)がその後の市街地拡張で基盤整備が展開し市街地拡張を支えた実態が複数事例から明らかとなった。この駅を含めた交通施策の転換と市街地拡張のタイミングがその後の駅周辺都市空間の基盤整備において重要な契機をはらんでいる可能性が示唆された。 また、近年の都市再生事業等による駅周辺地域の再基盤整備事業が進められている都市では駅前広場の再整備に伴い再度区画整理事業が施行される地区もあり、駅の高度利用に伴い広場の高機能化と空間拡張が行われている事例の実態を明らかにした。 地方都市の駅を中心とした市街地モデルは戦後発展し、戦災復興事業はそれらを下支えした基盤と言えるが、その後の駅利用の規模の変化の中で、さらに再基盤整備の需要が生じる都市とそうでない都市にわかれるなど、その空間モデルは異なる様相となってきていることが明らかとなった。
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