最終年度は,平成28年度末に実施したWebアンケート結果の分析を行うとともに,成果の一部を論文誌へと投稿した。主要な成果を以下に挙げる。 (1)混雑状況を表す程度表現の定量化と検証:群集混雑の状況の表現に用いられやすい程度表現52種類の「混雑度評価点」を定量化できた。また,大地震発生後の群集混雑を撮影した写真を各回答者に提示し(群集混雑に直面した状況を仮想的に想定し),回答者が選択した程度表現とその混雑度評価点を紐付けることで,写真から判断される混雑度の高低と混雑度評価点の順序が良好に対応していることを確認した。 (2)混雑度と人間行動の関連分析:提示した写真の混雑度評価点が高いほど,「移動を中断し,その場にとどまる」と回答した人の割合が高い傾向が見られた(ただし,この傾向は回答者の属性によって異なり,例えば女性は年齢が上がるほど「とどまる」割合が高くなるが,男性は逆の傾向が見られた)。この結果は,混雑情報(テキストまたは写真)がSNSに投稿された地点における,群集混雑度の推移予測に利用できる可能性がある。 (3)混雑度とSNSへの投稿意思の関連分析:混雑度評価点の高い写真ほど,「状況をSNSに投稿したい」と回答した人の割合が増加した。すなわち,非日常的な混雑状況ほどSNSに投稿されやすいことを意味し,群集混雑発生を抽出する上での本手法の有用性が裏付けられた。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果を応用することで,Twitter APIによりリアルタイムかつ自動的に抽出した「混雑ツイート」から,位置情報または本文中の駅名・路線名等の情報を用いて群集混雑発生地点を推定し,さらに,本文中の程度表現から群集混雑度を推定するという,一連の枠組みを構築できた。現在,様々な状況(イベント時,交通障害時,降雪時等)におけるツイートデータを実際に収集し,群集混雑度の推定精度を検証している。
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