これまで障害者のグループホーム(GH)では,「地域」そのものの議論がなされていない。そこで本研究では障害者GHの「住宅」ではなく「地域」についてアンケート調査をもとに考察を行った.アンケートは、日中活動場所との関係、近隣との関係などを質問した。大阪市周辺の4市のGH345部配布し回答は58部であった。GH居住者のうちよく外出する2人を選んでもらいアンケートに回答をお願いした。分析対象は71人である。 居住者の外出先の組み合わせをみるために,生活店舗種別数ごとに近辺余暇施設種別・遠方余暇施設種別の組み合わせと日中活動の事業所のアクセス手段からみたGHのタイプとの関係をみる。事業所へのアクセス手段がすべて車送迎しているGHの居住者のうち,生活店舗種別数・近辺余暇施設種別は0かつ遠方余暇施設種別が0でない居住者が4人いる。これら居住者は事業所へは車送迎であり,徒歩・自転車でアクセスしやすい生活店舗や近辺余暇施設に行っていないことを意味する。日頃から徒歩圏での「地域」と関わることはなく,GHと事業所の「二拍子」の生活を送っている可能性がある。これら居住者は遠方余暇施設での外出は月や年に数回ガイドヘルパーとともに鉄道を使って外出していて,これら居住者にとっての「地域」は徒歩圏内ではない。徒歩圏内の「地域」が空白化し,徒歩圏の外側にある地域が「地域」であると言える。 事業所へのアクセス手段がすべて公共交通であるGHの居住者のうち,生活店舗種別数・近辺余暇施設種別が0かつ遠方余暇施設種別が1である居住者が5人いる。これら居住者は平日はバス・鉄道を使って事業所に通うときにのみ徒歩圏での「地域」と関わっている可能性がある。遠方余暇施設での外出は単独,友人やガイドヘルパーと行っている。彼らにとって「地域」は徒歩圏内では希薄であり,広域な「地域」であると言える。
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