研究課題/領域番号 |
15K18179
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
栗山 尚子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00362757)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 屋外広告物 / 景観 / 施策 / 連携 / 地域性 |
研究実績の概要 |
景観法では、良好な景観が潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠であり、景観施策により個性的で活力ある地域社会の実現を図ると位置づけられている。住商が混在する都市部では、良好な景観の実現には屋外広告物法との連携が不可欠である。本研究では景観と屋外広告物が地域特性に応じて最適となる定量的及び定性的な基準の構築を目的とする。併せて、計画・協議両レベルでの案件の扱いに注目し、行政の仕組み内で2つの法の連携を強化する方法論の確立に寄与できる知見を導き出すことを目的とする。本研究は(1)「歴史都市における景観行政と屋外広告物行政の連携の仕組みづくりとその効果に関する研究」、(2)「一般市街地における屋外広告物条例の制定・改正の状況と課題に関する研究」、(3)「一般市街地における屋外広告物が景観に与える影響とその対策に関する研究」で構成され、これらの結果を総括し、研究目的の達成を目指す。 研究(1)は、京都市を対象に、屋外広告物担当部署と景観担当部署へヒアリング調査を実施し、データの収集を行なった。市域全体での基準の厳格化、職員を増員してのローラー作戦による広告物の是正指導と適正化、屋上広告物の市内全域禁止、点滅式広告の抑制、突出し看板の禁止が、景観の質の向上への効果が高い基準項目である、表彰・助成・優良広告物指定等のデザインの質の向上を促進する制度の充実が、京都市で屋外広告物の規制・誘導の効果を高くした要因であることを明らかにした。 研究(2)は、景観法施行前から景観行政に取り組み、地域性の高い景観の実現を目指す自治体が多い兵庫県下の景観行政団体を対象に、景観条例及び屋外広告物の制定・改正の状況の整理を行なった。平成28年度に、対象とする景観行政団体へアンケートを実施し、景観条例と屋外広告物条例の連携状況と課題を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究(1)に関して、屋外広告物規制の効果のある地区を対象に、屋外広告物の大きさや色について現地調査を行い、基準内容と実際の街並みへの反映状況を検証する予定であったが、市域全体で屋外広告物基準を厳格化したため、屋外広告物の規制により景観の質が向上した地区が市域全体でみられ、地区の選定が困難である状況である。また、規制の結果の景観の質の向上について、京都市がパンフレットを作成し、ある程度の検証を終えている。よって、本研究では、規制よりも誘導に着目し、地域主体での屋外広告物の誘導を実施している地区を見つけだし、誘導の成果の検証を行なう方針へと転換する予定である。 研究(2)に関して、屋外広告物条例の制定や改正の進行中である景観行政団体がいくつかみられ、制定や改正内容に対応したアンケートを計画する予定であるため、当初予定よりやや進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究(1)に関しては、屋外広告物の誘導を実施している地区を見つけ、誘導内容の考え方、地域の人々の景観への評価と意識、行政との連携状況等に関する調査を実施し、基準の厳格化以外での屋外広告物のコントロールによる景観形成の手法の構築に関する知見を得る予定である。 研究(2)に関しては、研究代表者が兵庫県下の複数の景観行政団体の景観審議会委員を務めていることから、審議会の場で随時情報の収集を行なう。それに加え、景観と屋外広告物の連携状況を明らかにするために、兵庫県下の景観行政団体へのアンケート調査を実施する。また、景観形成上屋外広告物の影響が大きいと考えている地区や屋外広告物に関する課題を尋ねる設問もアンケート調査に組み込み、課題と基準内容の対応を検証する予定である。景観行政団体であれば、団体独自の屋外広告物条例の制定が可能となるが、県の屋外広告物条例をそのまま運用する団体がいくつか確認できることから、県の屋外広告物条例と市町村の景観行政団体との整合性についても、調査・分析を行ないたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度中に、地区を選出しての詳細な現地調査にまで至らなかったため、現地調査及び分析の補助作業に対する謝金の執行ができなかった。 また、今年度は行政へのヒアリング等が主の調査作業であり、画像処理等のデータ分析が不要であったため、分析用パソコンを購入しなかった。 以上の2点の理由より、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は具体的に地区を選出して、屋外広告物が景観に与える影響に関して調査分析を行なう予定である。そのため、調査補助者に対する謝金及び分析用パソコンの購入のために、次年度使用額が必要となる。
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