昨年度に引き続き、不動産仲介事業者に対するヒアリング調査を実施して、中小老朽オフィスストックが建替を伴わずに持続的に利活用される条件を分析した。その結果、中小老朽オフィスストックの利活用には、「市場条件」「物理条件」「事業者条件」の3要素が重要な役割を果たすことを明らかにした。そのうち「市場条件」については、調査対象とした全地域に共通してコストパフォーマンスが重視されており、手頃な価格のオフィス供給が、対事業所サービス業の流入の要因となっていることがわかった。また、「物理条件」は主に都心からの距離とオフィスビル内部の機能性によって、「事業者条件」は主に事業者(ビルオーナー)の属性や事業意欲によって、それぞれ利活用の傾向が大きな影響を受けることがわかった。 本研究では、期間全体を通して、大都市部における中小老朽オフィス群の発生実態と新興企業の流入要因の把握を行った。その結果、主に以下の三点を明らかにした。①手頃な価格の零細オフィスビルは、対事業所サービス業のような都市型産業の苗床として機能している。②都心部ではオフィスの更新が一定程度進み、業務市街地としての特性が維持される傾向にある。③都心からやや離れた場所では住宅の都心回帰とともに、マンション化が進み、業務床ストックは徐々に減少しつつある。④中小老朽オフィスストックの利活用には、「市場条件」「物理条件」「事業者条件」の3要素が重要な役割を果たす。
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