本研究の対象である16世紀末から17世紀初頭のヴェネツィアは、J.サンソヴィーノやA.パラーディオの死後にあたり、かつヴェネツィア・バロックの発展を率いていくことになるB.ロンゲーナが登場する前の時代にあたる。前後の時代のように、圧倒的な影響力を持つ建築家が不在だったこの時代は、これまで研究の蓄積が極めて少なかった。本研究では、この時代が社会的変革の時代であることに視座を置き、ヴェネツィアの都市・建築の実態を解明しようと試みた。これにより、巨匠が活躍した2つの時代を結ぶ極めて重要な時期の都市・建築の実態を解明した点に本研究の意義がある。
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