研究課題/領域番号 |
15K18192
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
守田 正志 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90532820)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ドーム / 東地中海 / イスラーム / ビザンツ / 建築構成 / 建築技術 / アナトリア / ギリシャ |
研究実績の概要 |
本調査研究の3年目に当たる平成29年度は、研究主対象地域であるトルコ共和国に加え、マケドニア共和国において、中近世イスラーム建築および中世ビザンツ教会堂の悉皆調査ならびに現地研究協力者との研究・調査打ち合わせ、調査許可関係の調整を実施した。調査内容は、以下の通りである。 ●2017年9月8日~24日に、トルコ共和国およびギリシャ共和国の各都市(エスキシェヒル、イスタンブル、オフリド、スコピエ)を拠点に、約30棟の中近世イスラーム建築および中世ビザンツ教会堂建築の現地調査を実施した。写真撮影・平面実測を中心に、当該地域における遺構の状況を把握するとともに、内部架構の詳細を確認した。また、一部の遺構においてはビデオ撮影による動画記録も実施した。 ●調査から得られた写真データおよび実測データに基づく平面図から、遺構ごとに、建築外部構成・内部構成の整理を進めた。本調査において、オスマン朝の勢力拡大に伴う、現マケドニア領でのドームを有す近世イスラーム建築の主要遺構を調査し得た。併せて、マケドニア共和国に現存する中世ビザンツ教会堂ついても、数棟、調査し得た。調査データを基に、これまでのデータベースを更新した。 ●刷新したデータベースをもとに、ドームの架構手法の整理および分析に着手した。 上記の調査ならびに研究成果の一部を、2017年度日本建築学大会、2017年度日本建築学会関東支部研究報告会等において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査に関して、本年度は研究計画に従ってトルコ共和国およびマケドニア共和国を主対象地域とした現地調査を1回実施した。本年度の調査では、これまで進めてきた中世イスラーム建築の前身にあたる中世ビザンツ教会堂建築や、その後の展開を検討するためのオスマン朝期の近世イスラーム建築を約30棟調査し、今後の東地中海地域のドーム建築の比較考察を進めるためのデータを拡充でき、当初の計画どおり順調に進展しているといえる。 調査で得られたデータを基に、予定通りドーム架構手法の分析を着実に進めている。その成果として、トルコに現存する中世墓廟建築を主対象に、「トルコ三角」と呼称されるドーム架構形式の展開について分析し、査読論文一本を発表した。
以上から、現在までの達成度としては「おおむね順調に進展している」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
●2018年度は、本調査研究の最終年度であることから、これまでの収集したデータを見直したうえで、トルコ・ギリシャ・マケドニアに現存するイスラーム建築やビザンツ建築遺構の補足調査を実施する。調査内容は前年度と同様とし、対象遺構の平面実測図、写真測量図、細部写真等を拡充させるとともに、これまでの検討の精度を向上させる。併せて、大学図書館等で文献史資料の収集を行う。 ●内部構成の検討のまとめ:ドーム直下の架構形式に着目した前年度までの検討を踏まえ、ドーム架構形式の系譜についてまとめる。特に、昨年度はアナトリア地域に特有といわれる三角形を用いたドーム架構形式の系譜について整理し終えたので、本年度は、他の架構形式(スキンチやペンデンティブ、ファンなど)の比較検討から、中世の東地中海地域におけるドーム架構形式の歴史的展開について総括する。 ●外部構成の検討の深化:昨年度と同様、ドーム建築の外部構成に関し、特にドーム下部周辺について、その形状と支持方法に着目した、ドーム部周辺の外部構成の検討を進める。ドーム部内外の形状、ドーム下部(ドラム部や控え壁)の外部形状や、架構部位(特に、スキンチ)の外観上の処理方法、それら三者の接合方法から、ドーム部全体の構築手法について、キリスト教とイスラーム文化圏下のドーム建築の異同について検討する。 ●調査および分析の結果を、各種学会の研究報告会・論文等で随時報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の支出額に対し、概ね執行した。ただし、次年度が助成の最終年度で予定支出額が少ないため、わずかに残った予算は無理して執行せず、次年度使用額として確保することとした。 次年度使用額は、一部を調査費に充てるとともに、文献資料の購入予定費を増額する。
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