研究課題/領域番号 |
15K18193
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
服部 佐智子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 東工大特別研究員 (20614126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 江戸上屋敷 / 奥向 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで申請者が取り組んできた江戸城本丸御殿大奥(以後、「大奥」と表記)や加賀藩の大名屋敷の女性の空間における住宅史研究をより深化させ、将軍家の女性の住まいと大名家の女性の住まいの実態を分析することで、日本住宅史における女性の生活空間の住宅様式の一端を明らかにすることを目的としている。 具体的には、近世上層武家住宅における女性の生活空間として、実際に入輿した将軍家の娘の嫁ぎ先である御三家・御三卿、諸大名の奥向を取り上げ、「大奥」に関するこれまでの研究成果を踏まえた上で、新たに史料調査で収集した各種絵図史料や文献資料を基に、分析を行っている。 本年度は、尾張藩、紀州藩、水戸藩江戸上屋敷奥向の各種絵図史料や文献史料について、史料収集を実施した。前年度までの調査に加えて、さらに補足の史料収集として各藩の国許の絵図史料についても史料収集を実施した。調査内容は以下のとおりである。 尾張藩江戸上屋敷及び国許屋敷の奥向の各種絵図史料、文献史料について、新宿歴史博物館、徳川林政史研究所、名古屋市蓬左文庫、名古屋市鶴舞中央図書館などで史料の全体の把握するとともに、史料収集、意見交換を行った。紀州藩江戸上屋敷及び国許屋敷の奥向の各種絵図史料、文献史料について、和歌山県立博物館、和歌山市立博物館、和歌山県立図書館、養翠亭、和歌山城整備企画課、江戸東京博物館などで史料の全体の把握するとともに、史料収集、意見交換を行った。水戸藩江戸上屋敷及び国許屋敷の奥向の各種絵図史料、文献史料について、茨城県立歴史館、戸定歴史館などで史料の全体の把握するとともに、史料収集、意見交換を行った。 また収集した史料をもとに紀州徳川家中屋敷本御殿大奥における部屋構成や用例等の検討を行い、計画理念について一定の知見を得た。上記の研究成果の一部は、2016年度日本建築学会関東支部研究発表会等において報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の史料収集予定であった水戸藩江戸上屋敷及び国許屋敷の奥向の各種絵図史料、文献史料が所蔵されている、徳川ミュージアムの彰考館が平成29年9月30日まで東日本大震災復旧工事に伴う史料整理のため休室していることから、当初の予定を変更し、平成29年度に史料収集を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
○史料調査の継続:継続して史料収集を行う。前年度できなかった水戸藩及び、御三卿、薩摩藩、越前福井藩の江戸上屋敷奥向の各種絵図史料や文献史料について、史料の全体の把握するとともに、史料収集を行う。引き続き、近世日本建築史研究者との研究交流、意見交換を行う。調査は1 名で行い、1 週間程度の滞在をそれぞれ年1 回程度予定している。 ○史料考証の総括:新たに収集した史料の史料考証を行う。前年度の検討結果を踏まえ、時代的変遷を復元的に考察する上で最も適正と考えられる絵図の特定を通して、取り扱うべき、最も適正な絵図を特定する。 ○奥向における部屋構成の検討の総括:部屋構成、変遷について分析し、造営年代による変化をとらえる。 ○設備空間の検討:御湯殿・御用場の仕様や変遷の検討を通して、藩主や正室をはじめとする女性の生活空間の変容を考察する。 ○室内意匠の検討:各殿舎を構成する部屋の室内意匠の特徴を明らかにし、その仕様が各殿舎・各部屋によってどのように使い分けられていたかについて検討をする。 研究分析の結果を、各種学会の研究報告会、論文等で随時報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記に示した通り、本年度の調査は、徳川ミュージアム彰考館の調査を始め、今年度以上に旅費及び複写代金が掛かると予想される。以上から、若干ながら、可能な限り予算を次年度のために残すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
したがって、次年度使用額を含めた次年度の研究費の大部分は、今年度同様に、史料調査の旅費、複写代、書籍購入費に充てることを予定している。また、必要に応じて、調査機器の更新のための費用に充てることを予定している。
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