研究課題/領域番号 |
15K18194
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 一貴 神戸大学, 工学研究科, 学術研究員 (90533977)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | モダニズム / 故郷 / 家庭 / ジードルンク / 工業化 / セルフビルド / 田園都市 / 倹約 |
研究実績の概要 |
本研究は,第一次世界大戦直後の住宅困窮期におけるドイツで住宅建設をめぐって追求された新しい郷土像を明らかにすることを目的とするもので,住宅・都市の史的展開の実態解明に対する新しい視座の獲得を目指している。立場の異なる建築家や組織が提示する理念と手法,それを基礎に応用したとされる実際の計画やその現況を分析することにより,新しい郷土像について,理念・手法の特質とその形成過程,そして建築空間像の把握を試みる。 2016年度は,『自然建設方法』『倹約建設について』そして『未来の住宅都市』で示される理念と手法が,どのような議論の背景のもと,何を論拠として形づくられたか,そしてどのような議論を呼んだかについて,各著作で言及される原典資料や同時代の関連図書及び雑誌記事等で,昨年度のドイツの諸機関で調査・収集できた文献資料を用いて,理論・手法の形成過程の分析を進めた。また,『自然建設方法』の出版を企画した組織として注目される全国建設方法振興連盟の活動内容について,昨年度の調査により収集できた文献資料を用いて整理を進めた。 そして,各著作で示される理念と手法の実際の住宅建設計画への応用に関し,昨年度に予備的に実施した現地調査と,これまでに収集した文献資料の分析をもとに,建築家たちが実際の住宅・住宅地建設に対してその理念と方法をどのように応用し,どのようなかたちにまとめたか,具体的な建築空間像の把握に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は,交付申請書に記載した研究実施計画の通りには進まない側面があった。 理由として,文献資料の補足的調査および事例の現地調査をドイツへ渡航して実施する予定を立てていたが,欧州諸都市の治安情勢の変化や12月にベルリン市内でクリスマス・マーケットへのトラック突入事件が発生したことなどを踏まえ,安全管理の観点から不調に終わったことによるのが大きい。 一方,日本国内からでも調達可能な文献資料について調査・収集を進めている。また,2016年度に計画していた現地調査の一部について,2015年度のドイツ渡航に際し予備的に行うこともできている。 以上から総合的に判断し,「(3)やや遅れている」と評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度は,文献資料の精査に基づく理念・手法とその形成過程の分析をさらに進め,作業を補完するとともに,現地調査を行い,建築空間像の分析を進める。 具体的には,『自然建設方法』『倹約建設について』そして『未来の住宅都市』で示される理念と手法を実際の住宅建設計画に応用した事例に関して,現地とその周辺状況の調査,記録文書・図面・写真等の建築資料の調査を行い,文献資料の調査・分析により得られた知見を検証する。それとともに,建築家たちが実際の住宅・住宅地建設に対してその理念と手法をどのように応用し,どのようなかたちにまとめたかについて分析し,具体的な建築空間像の把握することを計画している。 そして,こうした文献資料と現地調査をもとに得られた知見を総合し,雑誌論文や学会発表等を通じて研究成果の発表と議論を行う方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2016年度に予定していたドイツへの調査旅行が,現地の情勢を考慮して安全管理の側面から実施に至らなかったため,外国旅費を使用することがなかった。このことから次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
2017年度は,ドイツへの渡航を伴う調査を予定している。当初,事例の現地調査について2都市を見込んでいたが,これまでに調査・収集した文献資料の分析から,3都市以上における調査を要する可能性も出ている。これらのことから,そのための外国旅費,文献複写費としての使用を計画している。また,いまだ収集し得ていない必要な文献資料のうち,国内外の機関の協力を得て,国内からでも賃借・複写等により調達可能なものが含まれることから,そのための現物貸借費や複写費,送料として使用する計画を立てている。そして,雑誌論文や学会発表等の研究成果発表にかかる費用としても使用することなどを計画している。
|