研究課題/領域番号 |
15K18194
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 一貴 神戸大学, 工学研究科, 工学研究科研究員 (90533977)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モダニズム / 故郷 / 家庭 / ジードルンク / 工業化 / セルフビルド / 田園都市 / 倹約 |
研究実績の概要 |
本研究は,第一次世界大戦直後の住宅困窮期におけるドイツで住宅建設をめぐって追求された新しい郷土像を明らかにすることを目的とするもので,住宅・都市の史的展開の実態解明に対する新しい視座の獲得を目指している。立場の異なる建築家や組織が提示する理念と手法,それを基礎に応用したとされる実際の計画やその現況を分析することにより,新しい郷土像について,理念・手法の特質とその形成過程,そして建築空間像の把握を試みる。 2017年度は,『自然建設方法』『倹約建設について』そして『未来の住宅都市』で示される理念と手法が,どのような議論の背景のもと,何を論拠として形づくられたか,そしてどのような議論を呼んだかについて,各著作で言及される原典資料や同時代の関連図書及び雑誌記事等の文献資料を追加調査・収集し,理論・手法の形成過程の分析を進めた。2017年10月から11月にかけてドイツに渡航し,ベルリン国立図書館及びベルリン工科大学図書館等にて文献資料の調査・収集を実施した。そのなかで,新しい郷土像の追求との関連性を指摘しうる議論の一端が,複数の同時代の雑誌(『Die Bauwelt』,『Der Staedtebau』)に見られたことから,大戦の始まる1914年まで遡って関係記事の調査・収集を実施した。他方で,ベルリン,フランクフルト等にて現地調査を実施し,文献調査により得られた知見の検証と建築空間像の把握を進めた。 また,これからの郷土としてのまちと若者との関わりをめぐって,課題を議論し共有する機会を得て,研究成果の一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
補助事業期間の2年度目の2016年度に,ドイツでの調査の実施を計画していたが,欧州諸都市の治安情勢の悪化を考慮し,安全管理の観点から見送った。2017年度には,当初の計画通りにドイツでの調査を実施できたものの,前年度の遅延分を取り戻すほど十分ではなかった。他方で,調査・収集した文献資料については精査・分析を進めている。以上から総合的に判断し,「(3)やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は,文献資料の調査に基づく理念・方法とその形成過程の分析,及び,現地調査に基づく建築空間像の分析をさらに進め,得られた知見を総合し,第一次世界大戦直後の住宅困窮期のドイツにおいて追求された郷土像の特質を明らかにする。 分析を進めるなかで,新たに調査すべき文献資料や確認すべき現地の状況が出てくることが想定されることから,2018年度においても,ドイツでの文献調査および現地調査を計画している。 そして,得られた知見を総合し,雑誌論文や学会発表等を通じて研究成果の発表と議論を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者によるドイツへの渡航を伴う調査に関して,2016年度には欧州諸都市の治安情勢の悪化を考慮して安全管理の観点から行わなかったことと,2017年度には当初の計画通りに実施できたものの,前年度分を取り戻すほどには至らなかったことから,次年度使用額が生じた。 2018年度は,ドイツへの渡航を伴う文献資料の追加調査および現地調査の実施を計画している。そのための外国旅費,文献複写費等としての使用を計画している。また,いまだ収集し得ていない必要な文献資料のうち,国内外の機関の協力を得て,国内からでも賃借・複写等により調達可能なものが含まれることから,そのための現物貸借費や複写費,送料として使用する計画を立てている。そして,雑誌論文や学会発表等の研究成果発表にかかる費用としても使用することなどを計画している。
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