研究課題/領域番号 |
15K18196
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
加戸 啓太 立命館大学, 理工学部, 助教 (60727379)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 伝統木造構法 / 継手仕口 / デジタルアーカイブ / 知識表現 |
研究実績の概要 |
本研究では伝統木造建築を成り立たせている構法に着目し、その三次元モデルベースのデジタルアーカイブ化を目的に、木割に代表される寸法体系、部材部位の設計法、継手仕口などの納まりの知識についてコンピュータ言語による記述を試み、知識ベースとしての実装を行っている。 研究期間の初年度にあたる平成27年度では、寸法体系について、五重塔の木割を例にケーススタディを行い、関係データベースにおいて各部材の断面寸法の比例関係を記録した。そこへの問い合わせを行うデータベース関数の実装により、任意の部材の寸法の問い合わせが可能となるような仕組みが試作できた。さらに、三手先斗拱部を対象に、部品の設計法の記述を含めたケーススタディを行っている。 また、継手仕口での納まりに関する知識をプログラム言語により記述し、三次元モデル化の際に利用する試行を行った。各種継手仕口の分析により、三次元モデルの形成プロセスとして大工加工を模した「ワーク(元の木材)-加工形状(切り欠かれる形状)」という手続きをとること、大工加工の手順から、一見複雑に見える加工形状も単純な柱状体の集合となると推定できること、から、まずはこれらの考えを基に納まりをアルゴリズムをプログラム言語により実装した。フロントエンドとするCADでの処理が、ワーク-加工形状と明快なものであれば、ソリッド演算をフロントエンドで行う方針をとってもそれほど煩雑な仕組みとならないと考えられる。引き続き継手仕口のバリエーションを増やしながら検討を行うことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木割に基づく寸法体系について任意の部材の寸法の問い合わせの仕組みを試作でき、加えて、継手仕口での納まりに関する知識のプログラム言語による記述についても試行できており、順調に研究を遂行できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、寸法体系、納まりについて試行を行いつつ、部品、あるいは部位の設計法についても整理しながら知識表現を行っていきたい。部品、部位の設計法においては、その見通しの良い記述手法について考察の余地があると考えている。昨今注目を集めているビジュアルプログラミングを取り入れるなど、言語ベースのプログラミングにとらわれずに試行を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は伝統木造建築の部分的な三次元モデルによるケーススタディを重視し、全体を詳細に作りこむような試行は先送りした。これに関連して高性能な開発用コンピュータの導入も先送りすることとなった。また、三次元モデルの検証に用いる三次元プリンタの材料についても、部分的なスタディによったため、新しいものは必要とならなかったため執行しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度はこれまでのケーススタディをもとに、伝統木造建築の全体を対象とした三次元モデル化(現段階では楼門ないし多宝塔を考えている)を通した考察を行う予定のため、これに伴い高性能なコンピュータを導入予定である。 また、研究代表者の異動に伴って、三次元モデルの整合性検証に用いるための、安価な三次元プリンタの導入も検討している。出力精度として問題があるようであれば、他の加工機の導入ないし整合性検証手法についても考察したい。
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