コンピュータ言語による伝統木造構法の記述について研究を行い、以下に示す記述の対象について、テキストプログラム、ビジュアルプログラミングでの試行を通し、モデル化および知識表現を試みた。 木割に代表される寸法体系、規矩術を含めた部材部位の作図設計法では、まず、商用の三次元CAD付属のビジュアルプログラミング環境を用いた予備検討を行った。次に、考察に基づき、用意すべきコンポーネントやその表現形式を整理し、独自に実装したビジュアルプログラミング環境上で考察を重ねた。部品の三次元形状を生成するための処理は、木材に加工を行うための墨付けの手順と、そこへの入力となるパラメータの計算に整理できる。また、複数の部材で構成される三手先斗供部などの部位を表現しようとすると、各部材の配置やその姿勢に関する情報が増え、加えてその記述も冗長となるが、他の部材と組み合う際にどのような配置・姿勢になるか、までを部品の性質として記述しておくことで整理できることを確認した。 継手仕口といった部材の納め方に関する知識では、納まり部を複数有する部材の雛形について考察を行い、続いて部材と部材が納まる際の手続きをアルゴリズムとして記述する実装を行った。また、姫路城大天守の二重屋根部および三重南東部、楼門の一層目軸部、一般の木造住宅などの三次元モデル化を通してその可用性を確かめた。 これらの結果をまとめ知識データベースとし公開することには、データの複雑さやフロントエンドとした三次元CADの条件などから至らなかったが、引き続き具体の建築の三次元モデル化を進めつつ検討を行うことを計画している。
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