研究課題/領域番号 |
15K18198
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
會田 涼子 近畿大学, 建築学部, 助教 (40734067)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イタリア / フィレンツェ / 近代都市計画 / 19世紀 / 丘陵地 / ヴィラ |
研究実績の概要 |
本年度は、平成27年9月1日から9月6日まで、フィレンツェ国立中央図書館(BNCF)において、フィレンツェの18世紀後半から19世紀半ばにおける都市改造と土木事業に関するイタリア語文献リストを作成し、複写にて収集した。また、希少書籍と古地図に関してはフィレンツェ内の古書店をまわり、それぞれ購入した。実地調査では、研究対象地区の建築物の写真撮影を徒歩で行い、連続的な風景を検証するため、車中から動画撮影を行った。近年、増加しているインターネットで閲覧できる関連史料の現状把握と、リスト化・データ化を継続的に行った。 以上は、19世紀半ばの首都期のフィレンツェ都市部と都市拡張部を対象として行ったものである。新たな文献収集と実地調査によって、フィレンツェの近代化都市改造と18世紀後半の土木技術の発展とを、丘陵地における道路・広場建設の際の眺望確保という観点から関連付けて検証する指標をいくつか設定することができた。これにより、これまでの研究では精査していなかった18世紀の土木事業に関する史料を、新たに収集する必要がでてきた。 また、実地調査を行うことによって、建築物の立面、配置計画などにおいて分析できる範囲がより明確化し、地図上では把握できない眺望の在り方を確認することができた。これにより、研究対象地の初期段階の計画にかかわる史料の精査を先行して行う必要ができた。このため、当初予定していた平成28年3月の実地調査は次年度以降に行うこととし、本年度は史料と文献の収集、既収の史料の整理と分析を継続的に行った。また、次年度以降の実地調査の対象地区が変更される可能性がでてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた対象地区であるフィレンツェのコッリ大通り周辺の住居地区について、文献調査と実地調査をおこなった。 フィレンツェの近代化都市改造を設計した建築家ジュゼッペ・ポッジが作成した手記である土地所有規定書を精査することによって、そこに景観に関わる建築条件が読み取れることを明らかにした。また、建築の指定方法において、①形式の指定、②数値による指定、③図面による指定の複合的な指定が行われていたことが明らかとなった。また、この規定書の作成目的が建物建設後の監視のためであるという、この地区設計の初期段階にすでに長期的視点で計画されたという重要な側面が明らかとなった。さらに、コッリ大通り住居地区で想定された眺望が、近景と遠景の両方を想定していることが明らかとなり、18世紀のトスカーナではみられない連続的な眺望を想定していたことが明らかとなった。 また、研究対象地区である丘陵地は、18世紀においては河川の洪水対策案であった迂回路が計画された場所にあたることが文献史料の精査から明らかとなり、19世紀の都市改造において、過去の災害経験による調査・研究の蓄積が如実に影響している可能性が見えてきた。また、この洪水対策は19世紀半ばの都市改造時には都市部の堤防建設と、支流の護岸工事、運河掘削という手法で行われたため、迂回路が掘削されなかった丘陵地が住宅地区となりえたことが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の成果を踏まえて、コッリ大通り周辺の住居地区と、フィレンツェの旧市壁周辺部の住居建築の変容を考察していく予定である。 まず、コッリ大通り周辺住居地区については、実際に建設された独立形式の住居であるヴィラ群の大通りに対する配置や、大通りから見える眺望の構成原理を明らかにするため、各ヴィラの土地区画内における配置、正面ファサードの形式・様式などの意匠性、大通りからのヴィラの見え方について、配置図、立面図等の具体的な作図を行いながら分析していく。 その後は、フィレンツェの旧市壁周辺に19世紀後半から20世紀前半に建設された住居地区の建築物について、ヴィラ形式、パラッツォ形式、ヴィラ-パラッツォ中間形式に分類し、道路に接した入口の位置、ファサードの意匠性について、既存の都市構造との関連のなかで分析をおこない、近代イタリアにおけるヴィラ形式とパラッツォ形式の変容について、都市拡大における既存建築物への介入手法と都市の意匠性の観点から検証を進めていく。 フィレンツェの事例において一定の成果が得られた後は、フィレンツェの後に遷都した現在の首都でもあるローマに対象都市を移し、分析を拡張していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当研究の初期段階において文献調査と実地調査を計画していたが、研究が進むにしたがって、想定していたよりも史料が豊富に存在していることがわかった。このため、文献史料の収集・精査を優先させて行うべきであるという判断から、本年度予定していた2回の実地調査を1回としたため、この調査旅費分が執行額減となり、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
該当額に関しては、次年度において実施予定の実地調査にかかる旅費と、文献史料の複写・購入費に充てる予定である。
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