今年度はローマの都市改造・都市拡張の対象地における文献収集を行った。分析に必要となる都市図・課税用不動産登記台帳などがデジタルアーカイヴ化されていることがわかり、購入及びデータベース化を行った。また、ローマ近郊のヴィラの建設年代を精査し、年代別の都市図にプロットし、近世までのヴィラの敷地が近代において利用された箇所を明確化し、さらに19世紀に入って建設されたヴィラの敷地が1871年のローマ遷都後に再びより小さな土地区分に分筆されていく状況が作図により読み取れた。これによって19世紀前半に多く建設されたヴィラの敷地の一部が新たな住居地区建設に利用されたことやヴィラそのものが消滅していたことがわかり、フィレンツェの場合と異なる現象がみられることがわかった。また、ヴィラ各戸の平面図が存在している規模の大きなヴィラについては大部分を収集できた。 また、本年度9月にはイタリア都市史学会(AISU: Associazione Italiana di Storia urbana 於ボローニャ大学)にて、日本の都市計画に関する専門誌における西洋の文献や技術の参照というテーマで学会発表を行い(共同発表)、本研究の近代イタリアの都市改造・都市計画に関するテーマの、欧米諸都市や日本の都市との相対化の手法としての都市計画技術の情報流通というテーマで議論を行った。 また、今回の研究対象範囲ではないが、イタリアの主要都市でありエミリア・ロマーニャ州の州都ボローニャを視察することができ、近代以降の都市拡大部のフィレンツェ・ローマとの共通性も散見され、今後の研究にとって有益な視察となった。
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