研究課題/領域番号 |
15K18199
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
張 岩 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80645135)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アモルファス / ナノ結晶 / 飽和磁束密度 / 保磁力 / 磁歪 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、平成27年度で組成探索した総濃度86.3at.%の鉄およびコバルト元素を有するFe81.3CoxSi0.5B13.5-xP4Cu0.7合金系(x=3-6 at.%)において、薄帯合金の作製およびイメージ炉による熱処理を行った。熱処理条件は、アニール温度として350-475度を選択し、加熱速度は10-800度/分、保温時間は10分とした。合金の初期のアモルファス構造およびナノ結晶化後の構造について観察を行い、その後、試料の磁気特性評価を行った。 ホウ素(B)をCo 5 at.%で置換した薄帯合金を用い、最適熱処理条件下で熱処理を行った試料について、VSMにより測定した飽和磁束密度は非常に高い値となり、最大で1.92 Tであった。DSC曲線の放熱量により、α-(Fe-Co)の体積割合が大きくなっていることが確認され、高飽和磁束密度が得られたことと一致した。しかし、ホウ素の含有量の低下に伴い、アモルファス母相に大きな結晶粒子の析出及び分散が発生し、続く熱処理プロセスにおいて均一な微細結晶組織を制御することができず、結果として軟磁気特性は悪化した。B-Hループアナライザを用いた測定からは、保磁力が20~60A/mの範囲であることが確認された。これらの結果より、高濃度の鉄とコバルト元素を有する合金は高飽和磁束密度(1.85T)と低保磁力(<10A/m)の両立を可能とし、限界組成はFe81.3Co5Si0.5B8.5P4Cu0.7であることが明らかとなった。また、飽和時の磁歪について、Fe83.3Si4B8P4Cu0.7、Fe79.3Co4Si4B8P4Cu0.7、Fe43.3Co40Si4B8P4Cu0.7合金において、磁歪はそれぞれ20 ppm、29 ppm、25 ppmであり、最適な熱処理後の磁歪はそれぞれ11 ppm、13 ppm、32 ppmであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高飽和磁束密度を有する優れた軟磁性材料を得るためには、アモルファス材の作製およびその後の結晶化処理が重要な鍵となると考えられる。平成27年および平成28年度で、高濃度の鉄とコバルト元素を有する合金の作製に成功し、高飽和磁束密度(1.85T)と低保磁力(<10A/m)の両立が可能な限界の合金組成は、Fe81.3Co5Si0.5B8.5P4Cu0.7であることを確認した。わずか0.5 at%のCo を増加により、Fe81.3Co5.5Si0.5B8P4Cu0.7は1.92 Tもの高い飽和磁束密度を示したが、軟磁気特性は悪化し、安定な低保磁力を得ることは難しくなることも同時に明らかにした。また、この保磁力が悪化した原因についても組織観察の観点から明らかにした。Coの増加とこれに伴うBの低減はアモルファス形成能を低下させ、局所的に存在する結晶構造(初期のアモルファス母相に存在)とアモルファス構造との不均一性により、熱処理による結晶化後に、結晶粒径を大きく増加させ、結果として保磁力が大きくなった。また、複数の組成の合金を用い、磁歪測定を行い、30ppm以下の磁歪を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画のとおりに、平成29年度は平成28年度で得られたFe81.3CoxSi0.5B13.5-xP4Cu0.7に対して、Co元素の添加量による磁歪の変化について詳しく調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度(平成28年度)、論文は投稿中であり、印刷と発行料金はまだ発生してないため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度(平成29年度)は、論文刊行は決定になったら、費用が発生するため、次年度使用額は有効に執行する計画である。
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