強磁性材料における粒界磁気モーメントと粒界微細組織および粒界における諸現象、特に粒界偏析との関連についてTEM/EELS法を用いて実験的に調査を行った。使用した強磁性材料は、Niであり、典型的な偏析元素であるSを粒界に偏析させ、粒界磁気モーメントの測定を行った。その結果、偏析量の多いランダム粒界では、粒界局所磁気モーメントが、純Niの約0.6mBから約0.2mB程度まで減少していた。一方、偏析量の少ない低角粒界や対応粒界では粒界局所磁気モーメントの変化は見られなかった。これは、粒界近傍でのNi原子とS原子の電子軌道の混成による、磁気モーメントの減少効果が、偏析の多いランダム粒界において大きいことが原因である。また、第一原理計算による理論計算によって、NiのΣ5対応粒界にSを添加させ、磁気モーメントの計算を行った。これより、磁気モーメントは、純Niの0.6mBから0.2mB程度まで減少していた。これは、対応粒界ではあるが、粒界の偏析量が50%と大きくなっていることから、実験で測定した対応粒界の偏析量より大きくなっていることから、磁気モーメントの減少が大きくなっていると考えられる。磁気特性と粒界微細組織との相関関係を明らかにすれば,磁性材料についての理解が深まり,高機能磁性材料の開発がますます進展していくと期待される。今回、研究では偏析によって磁気モーメントのがほぼ0になるdead layerを確認できたことから、このような層を利用するような磁気材料の開発に貢献できる考えられる。
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