研究実績の概要 |
本研究では無機らせん構造に希土類を導入した結晶とガラス相とで構成された新しい磁気光学ガラス材料の検討を行った。幾何学的な骨格構造に、らせん部位を持つ化合物は、その特異な電子状態に基づく大きな偏光面の回転(自然旋光)を持つことが期待される。本研究では、磁場に応答する希土類元素と、無機らせん構造を組み合わせて、磁場印加時に発生する偏光面の回転現象:ファラデー効果に関する材料の検討を初めて行った。透明で大きな磁気光学効果を示す無機化合物材料は、現在の光エレクトロニクスに欠かせない光アイソレータなどの中核材料として、今度も活躍することが期待される。 本研究ではまず結晶化ガラスコンポジットの材料合成と、機能中心として働く希土類を多く含むガラス材料を様々な条件のもとで作製を行った。磁気光学機能は希土類濃度で大きく異なり、単位面積/磁場あたりの回転能力は濃度が高いほど、大きな性能値を引き出すことがわかった。一方、希土類の濃度増加は光学材料である結晶ガラスの透明性を著しく低下させるとため濃度条件として0.5ー5mol%で行った。 次に上記の測定条件を満たす合成条件のもと作製した試料に対し、磁気光学効果の測定を行った。十分な光透過性を維持しつつ、希土類の光吸収(Abs~0.5, Eu2+:4f-5d)を確保できる透明ガラス試料を作製し、印加磁場(1.6T)のもとでの磁気光学効果(MCD)を検討した。本測定では磁場に依存した磁気光学旋光が可視に幅広い波長帯域で観測され、希土類が固溶するサイト毎に異なる磁気光学旋光を示すことが明らかになった。
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