研究実績の概要 |
この研究期間で、30個以上のパイロクロア型シンチレータの合成を行った。ここでは、単結晶体をマイクロ引き下げ法、チョクラルスキ法、フローティングゾーン法などによって合成したほか、放電プラズマ焼結法を用いた透光性セラミックスの合成にも取り組んだ。そして、多岐にわたる形態のパイロクロア型シンチレータの開発に取り組むことができた。。 この中には、Ce添加(Lu, Gd, La)2Si2O7のように、発光量が30,000光子/MeV程度以上と高く、実用化も期待できる材料の開発もできた。さらに、150-200℃といった高い温度でも発光量が落ちないということが分かってきた。そのため、地中5,000mなどの環境温度が150-200℃程度になる環境下での資源探査用のシンチレータとしても利用できることが分かり、実用化に向けて大きく前進した。 発光体の開発のみならず、バンドギャップエネルギーなどのより詳細かつ基礎的な特性についても評価した。たとえば、分子科学研究所のシンクロトロン放射光施設である極端紫外光研究施設(UVSOR)において透過率測定などを通じてバンドギャプエネルギーの測定を行い、また発光強度の温度特性についても測定し、なぜ発光量が高温でも維持できるかを明らかにした。 本材料は宇宙空間上でのガンマ線天体観測などへの応用も期待できることから、宇宙環境上でネックとなる放射線耐性についても、調査を行った。具体的には、陽子線やアルファ線などを当該シンチレータに照射させて、照射前後の発光特性を調査した。その結果、たとえば宇宙ステーションで1年間当該シンチレータを利用した場合にも発光量などの劣化がないことが分かった。加えて結晶の構造解析についても取り組み、発光機構と構造の関連について調査を進めている。 これまで当該結晶に関連して、5本以上の論文、5本以上の国際学会発表を行うことができた。
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