研究課題/領域番号 |
15K18210
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 和好 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (40437299)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不均一触媒 / 複合酸化物 / ガス化 / 炭素資源 |
研究実績の概要 |
今年度は、Baを含むSn、Ce、TiおよびZr系において、これらの複合酸化物触媒を固体炭素と接触させ、不活性雰囲気およびCO2ガス化雰囲気下で加熱した際の状態変化を評価し、触媒活性との関係を調査した。不活性雰囲気下での加熱における重量減少率はSn系>Ce系>Zr系~Ti系となった。加熱後試料の粉末X線回折より、Sn系における結晶質相はほぼ金属Snのみであり、また、Ce系ではCeO2のみであった。一方、Ti系およびZr系において、結晶構造は不変であった。これらの試料のSEM-EDS観察より、Sn系およびCe系においては、Ba成分が炭素中に均一に分布し、一方、Zr系およびTi系では、Ba成分の遊離と炭素中への分布は認められなかった。このことから、触媒活性の高いSn系およびCe系においては、上記の状態変化に伴い炭素中へ拡散したBaが活性点となり、炭素のガス化を促進していることが強く示唆された。なお、CO2雰囲気においては、いずれの触媒においても上記のような変化は認められないことから、酸化性ガスが共存する雰囲気においては、バルク構造はほとんど変化せず、CO2-炭素-触媒の三相界面の“近傍”のミクロ領域でのみ上記の状態変化に伴うガス化促進が生じることが強く示唆された。Ba-L3吸収端近傍のX線吸収分光測定により、炭素中に拡散したBaの化学状態を評価したところ、Ba-L3吸収端は複合酸化物触媒のそれと同じであった。このことから、Baは2価の状態を保っていることが明らかとなった。これらの結果より、Sn系およびCe系複合酸化物触媒においては、触媒表面のBaが炭素とコンプレックスを形成するとともに、吸着したCO2を活性化し、これによって、炭素のガス化を促進するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、開発触媒におけるCO2ガス化促進機構を明らかにするとともに、より高性能な触媒の設計指針を得ることを目的に、Baを含む複合酸化物触媒における、不活性雰囲気ならびにガス化雰囲気における状態および微構造変化を詳細に評価し、これによりガス化反応促進機構を予測した。高い活性を有する触媒では、表面のBaが活性点となり、固体炭素との接触点においてコンプレックスを形成するとともに、吸着したCO2を活性化して炭素のガス化を促進することが強く示唆され、高活性触媒の設計に資する重要な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
Baを含む複合酸化物においては、4価カチオンとの相互作用によってBaの触媒活性が変化することを見出した。次年度は、他のアルカリ土類金属を用いた場合にも同様の触媒活性が発現するか否かについて検証するとともに、これらアルカリ土類金属の特性、例えば塩基性と触媒活性との関係を調査することにより、さらなる触媒活性の向上に資する知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は物品費(消耗品)および調査研究旅費を、ほぼ、当初の計画どおりに執行したため、平成26年度からの繰越金が残った。また、当初の予想とは異なる結果が得られており、さらに詳細な検討を次年度に行う必要が生じた。そのため、残金は平成29年度に繰越す。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入、実験装置の保守、施設使用料等に使用する予定である。
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