研究課題/領域番号 |
15K18212
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安井 伸太郎 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (40616687)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強誘電体 / 薄膜 / 歪み / 四面体構造 / 分極反転 |
研究実績の概要 |
本研究は、従来は圧電体と理解されていたウルツ鉱型カルコゲナイト材料を強誘電体化することであり、その分極反転に関する研究を計算および実験を用いて検討してきた。第一原理計算結果より、ZnOの自発分極値は約90μC/cm2であり、また分極反転に必要な活性化エネルギーは0.3eVであった。これはチタン酸鉛と同等の値であり、まさにチタン酸鉛の場合は高品質薄膜の作製により分極反転を可能とした。同様に本研究でも高品質薄膜の作製によって分極反転可能であることを示唆する。ウルツ鉱型カルコゲナイト材料にはZnOおよびBeOを上げるが、ZnOの場合は欠陥などの低品質化によるキャリアが導電性を生むことが知られており、完全なる絶縁体を作製することが非常に難しい。現にZnOの薄膜作成条件を幾つか検討したが現在は絶縁性の高いサンプルは得られていない。そこでBeOも同時に作製を行い、こちらは高絶縁性の高品質サンプルが得られる条件出しに成功している。薄膜はパルスレーザー堆積法(PLD)によって単結晶基板を用いてエピタキシャル成長させたものを作製した。現在の所、基板には(111)SrTiO3、(111)YSZ、c-sapphireの三種類を用いた。すべての基板上にBeOは001配向し、それらはエピタキシャル薄膜であった。薄膜の表面形状は作製温度およびアブレーションレーザのエネルギー密度を変化させることで平滑な表面およびナノピラーライクな形状まで作製仕分けることが出来た。強誘電性の測定のためには表面平滑膜の方が好ましいので、こちらの作製条件を採用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は計画通りにウルツァイト薄膜の作製を行うことに専念した。電気測定を行うためにはリーク成分を排除した薄膜の作製が重要となるために、平滑な膜、緻密な膜などの高品質膜の作製が必要となる。そのためには成膜条件を充分に検討する必要があった。指針としては、歪み成分のコントロールが非常に重要なファクターであると考えていたために、格子定数を考慮した単結晶基板の選択(SrTiO3、YSZ、サファイア)、そして使用する電極(SrRuO3)について検討を行った。また、分極反転を起こす可能性があるウルツァイトのc軸長が基板面直に成長するように基板方位についても検討を行った。基本的には面内のシンメトリーが三角形である必要があると考えていたが、正方形である単結晶基板(例えば100STO)であっても自己的にc軸に成長することが分かった。しかしながらその膜は他のヘテロエピタキシャル成長した薄膜に比べて、結晶モザイク性は低く、また面内はランダム配向であった。 現在の所、高品質膜作製が可能となったために、今後キャパシタ構造を作製して電気特性、特に強誘電性の評価を行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後はいかの手順により研究を遂行していく予定である。 1,高品質BeO(doped-ZnOも検討)の作製 2,単結晶基板選択による残留歪みの制御 3,バッファー相の挿入による結晶歪みの制御 4,リーク特性の測定 5,誘電性の測定 6,強誘電性の測定 7,活性化エネルギーの変化を見るための温度特性の測定
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次年度使用額が生じた理由 |
Solid Phase Epitaxy(SPE)の実験のために購入を予定していたMIRA5000について購入を行わなかった。その理由はSPEを行わずとも、非常に平滑な高品質のサンプルを別手段で得ることが出来たためである。
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次年度使用額の使用計画 |
主に物品費に余裕が出来たために、現在円滑に進んでいる薄膜作成方法を採用し、この手法がより先端な研究結果を得るための基板やターゲット、薬品などの使用する予定である。
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