酸化物イオン伝導体(固体電解質)と混合伝導体(空気極)界面における酸化物イオン交換反応係数の直接測定と、電極過電圧の関係を明らかにすることを目的として本研究を遂行した。空気極-電解質界面におけるイオン交換係数を実測することは、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の空気極反応機構を明らかにし、空気極過電圧の低減にむけた材料設計方針を提案する上で重要である。 最終年度は混合伝導体であるSr添加La2NiO4緻密薄膜(20-180nm)をイットリア安定化ジルコニア上に作製し、交流インピーダンス法による電極過電圧測定を行った。本測定結果を前年度測定した界面交換反応係数と比較することにより、電極-電解質界面の酸化物イオン交換と空気極過電圧の関係を調査した。 その結果、電極過電圧が電極内における酸化物イオン拡散律速となる厚みの大きなSr添加La2NiO4におけるインピーダンスにおいて界面における酸化物イオンの交換反応の影響が観測された。ナイキスト線図において、高周波数領域と低周波数領域において2つの円弧が観測された。観測されたインピーダンスを解析したところ、高周波数領域における抵抗値は、同位体交換法にて観測した界面交換反応係数から予想される抵抗値と一致することが分かった。また、インピーダンス測定結果によりSr添加La2NiO4とイットリア安定化ジルコニア界面における酸化物イオン交換特性は、Sr添加La2NiO4表面における気相酸素との交換反応係数と比較して大きいことが分かった。この結果は、前年度測定した同位体交換法にて評価した結果と一致した。 以上、本研究により空気極過電圧と電解質-空気極界面におけるイオン交換特性の関係を定量的に評価することに成功し、固体界面においては非常に高い酸化物イオン交換特性を示すことが分かった。
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