研究実績の概要 |
固体酸化物形燃料電池の電解質への応用が期待されているメリライト型の層状構造を有する酸化物イオン伝導体について、導電特性と原子配列の関係を明らかにし、新規材料の設計指針を得るため、以下の実験を行った。 これまでの研究成果を踏まえて、特にLa1+xSr1-xGa3O7+dに着目し、2体分布関数(PDF)の解析による周期性のない構造(欠陥構造)の検討と、第一原理分子動力学計算による伝導経路の検討を行った。また、Gaの一部を異元素で置換した物質についても、同様の検討を行った。 Bragg反射を用いた結晶構造解析により、伝導種となる酸化物イオンの平均位置が明らかになったため、平均構造をもとに2体分布関数を再現する原子配列を詳細に検討した。このとき、Bragg反射とPDFデータを併用した逆モンテカルロ法を適用することによって、伝導イオンと置換種の相対的な位置関係を解析した。さらに、解析精度の向上を目的として、第一原理計算による構造緩和の援用も行った。その結果、La1+xSr1-xGa3O7+dとLaSr(Ga,Al)3O7について、同じ結晶学的サイトを占有する元素を区別することに成功した。さらに、得られた原子配列を詳細に検討した結果、伝導種となる酸化物イオンは(La,Sr)サイトを占有するSr2+よりもLa3+の近傍に存在しやすいことが明らかになった。 酸化物イオンの伝導機構に関する知見を得るため、逆モンテカルロ法によるPDF解析により得られた原子配列をもとに、第一原理分子動力学計算を行った。その結果、LaSrGa3O7系材料においては、組成によらず酸化物イオンがGa-O層の隙間を伝導することが示唆された。
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