研究実績の概要 |
昨年度に発見した複数の異種元素を共添加した二酸化チタンの特徴的な振る舞いに関し、今年度は固相反応法による試料の合成とX線吸収分光による添加元素の状態分析を行った。 一例として、Ti4+よりも高価数(5+)の物質として五酸化二ニオブ(Nb2O5)、低価数(3+)の物質として三酸化二鉄(Fe2O3)を出発原料とした結果について記す。大気圧下で1200℃にて焼成したところ、共添加したものは、Nb2O5、Fe2O3を単独で添加したものとは異なる色を呈した。Tiに対するFe濃度を固定し、そこに加えるNbの濃度を上げていくと、色が赤褐色から橙色を経て黄緑色へと連続的に変化した。Fe濃度を変化させた場合には同じ色を呈するNbの濃度も変化していった。このことから二酸化チタン中に共添加したNbとFeは互いに影響を与えていることが示された。 詳細な解析のために、Fe-L2,3端のX線吸収端微細構造(XANES)の測定を行った。標準物質として、四酸化三鉄(Fe3O4)や三酸化二鉄(Fe2O3)と比較したところ、二酸化チタン中に単独で添加したFeのFe-L2,3 XANESスペクトルは、四酸化三鉄(Fe3O4)とよく似た特徴であった。このことは、二酸化チタン中のFeは単独では二価と三価が混在していることを示している。一方、FeとNbを共添加した試料のFeでは三酸化二鉄(Fe2O3)と特徴が一致した。このことは、Nb添加の影響により、Feの価数が三価のみになったことを意味しており、共添加することで添加元素の価数制御ができることが示された。
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