平成29年度は、多孔性と磁性の両立により、更なる吸着性能の向上を条件別に試行してきた。このとき、環境負荷や資源活用を考慮し、(1)天然物由来の原料、そして(2)人工物由来の原料の利点を生かしつつ、低プロセスでの材料作製を行い、以下のような結果が得られた。 (1) 天然物由来の原料であるバクテリアセルロースに磁性流体や磁性粉末を添加し、炭素化して、磁性多孔質カーボンナノファイバー(CNF)を作製したところ、磁性流体添加CNFの保磁力はマグネタイト以上の値となり、磁性粉末添加CNFのそれよりも劇的に大きくなった。このとき比表面積は、磁性流体添加CNFは単味CNFと同等であったが、メソ孔容量が大幅に増加した。他方、バクテリアセルロースに磁性流体を添加した後、ヨウ素処理し、炭素化して、磁性多孔質CNFを作製したところ、ヨウ素未処理CNFよりも保磁力は減少したが、マグネタイトと同等の保磁力は維持していた。磁性流体添加後ヨウ素処理した磁性多孔質CNFでは表面積は増加し、且つミクロ孔容量が大幅に増加した。 (2) 人工物由来の原料である炭素前駆溶液に磁性流体や磁性粉末を添加し、炭素化して、磁性炭素材料を作製したところ、磁性流体添加材料のほうが磁性粉末添加材料よりも保磁力は大きくなった。また、炭素前駆溶液に熱可塑性樹脂ビーズを添加し、多孔質炭素材料を作製したところ、ビーズの粒径とほぼ同径の気孔が材料内部で大量に生成し、約5umビーズ添加材料では、表面にまで気孔が大量に生成した。さらに、炭素前駆溶液に磁性流体や磁性粉末と、熱可塑性樹脂ビーズを同時に添加し、炭素化して、磁性多孔質炭素材料を作製したところ、磁性流体のみ添加磁性材料よりも保磁力が大きくなった。このとき、気孔は、ビーズのみ添加多孔質材料と同様の傾向となった。
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