研究実績の概要 |
初めに粒界絶縁型構造を持つ導電体/絶縁体複合コンデンサのモデルとして、同構造を有するチタン金属/チタン酸バリウム複合コンデンサを独自に開発した低温液相プロセスによりチタン金属‐チタン酸バリウムcore-shell粒子を基に作製し、その電気特性について実証実験を行った。構造の微細化及び均一化を図ることで、10,000を超える有効比誘電率と5%以下の低い誘電損失を100Hz~100kHzの範囲で実現し、相対的に耐電圧の高い試料を得ることにも成功した。更に緻密化を図った試料においては、誘電損失は10%前後と高いものの、有効比誘電率が40,000~20,000程度を示した。この実証実験によって、微構造の均一性を担保することによって電場の偏り等を抑え、耐電圧の改善が可能になること、高い有効比誘電率が幅広い周波数帯において得られることが明らかになった。 この複合コンデンサの微構造デザインを基に、導電体/絶縁体間にエピタキシャル界面を導入することで更なる特性の改善を行った。本研究ではニッケル酸ランタン(LN:導電性ペロブスカイト化合物)、およびチタン酸ビスマスカリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウムなどの絶縁性ペロブスカイト化合物をそれぞれ選定し、水熱法によってcore-shell粒子を作製した。電子顕微鏡観察等から、LNナノ粒子が上記の絶縁性ペロブスカイト化合物により覆われており、一部の化合物においてはエピタキシャル界面の導入に成功した。放射光施設を利用した実験からは、LN表面にエピタキシャル成長した誘電層が歪んでおり、通常とは異なる誘電特性を示す可能性が示唆された。このcore-shell粒子を基に、低温液相プロセスによりcore-shell粒子の集合体の接合・緻密化を行い、最終目的である粒界絶縁型導電体/絶縁体複合セラミックコンデンサの作製に至った。
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