前年度の研究により、鉄鋼とアルミニウムの異種金属摩擦攪拌接合中に形成される金属間化合物は、接合ツールのプローブ部が鉄鋼を削った直後ではなく、ツールのショルダ部の押圧を受ける部分で急激に形成していることがわかった。また、この急激な金属間化合物形成箇所では、ショルダ部の押圧による鉄鋼の塑性変形が観察された。本年度では、まず有限要素解析により接合中の温度分布を調査した。その結果、当初発熱部として着目していた接合ツールプローブ部および接合ツールショルダ外周部ではなく、ショルダ直下部で最高温度になることが予測された。すなわち、このシミュレーション結果および前年度の組織観察結果より、ショルダによる鋼板の押圧による温度および鉄鋼の塑性変形が金属間化合物形成に大きな影響を与えていることが示唆された。これまでの研究で使用した通常形状の接合ツールでは、接合ツールショルダのワークへの押圧を避けることができないため、接合ツールショルダの押圧が軽減される形状の新接合ツールを考案・作製し、接合実験および組織観察を行った。新ツールを用いた接合材の断面および平断面を観察したところ、通常ツールでみられた鉄鋼の塑性変形が減少していることがわかった。また、この塑性変形の減少により、通常ツールでみられた塑性変形部における急激な金属間化合物の成長も観察されなかった。以上の結果より、鉄鋼とアルミニウムの異種金属摩擦攪拌接合において、接合材の強度を低下させる金属間化合物の形成を抑制し高品質な接合材を作製するためには、接合ツールのワークへの押圧を軽減し、鉄鋼の塑性変形を抑制することが重要であることがわかった。
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