本研究ではSn-3mass%Ag-0.5mass%Cu(以下SAC305、以下合金組成のmass%は省略)の価格低減を目的とした低Ag化による耐クリープ性の低下を、固溶強化により向上させ、SAC305と同等以上の耐クリープ性を有するはんだ合金の開発を目的としている。 本年度は、Sn基二元合金(以下Sn-X合金)の種々の試験条件での流動応力の測定と、昨年度見出したSn-1Bi-0.05Auの低Au化に取り組んだ。 Sn-X合金の合金元素は、X=Au、Bi、In、Sb、Gaとした。温度25℃、125℃、真ひずみ速度が1.0×10-4~1.0×10-2s-1の範囲の複数条件で流動応力を測定した。測定結果から変形機構を解析した結果、当初予想していた転位の上昇運動律速のクリープ変形と考えられたのは、125℃で一部の合金のみであった。そこで、本年度予定していた積層欠陥の観察は中止した。 Sn-1Bi-0.05Auの低Au化では、Au量を0.01mass%とし、Biの添加量を増加させた。その結果、温度25℃、ひずみ速度1.0×10-3s-1の流動応力がSAC305と同等以上となるSn-2Bi-0.01AuおよびSn-3Bi-0.01Auを見出した。 Sn-2Bi-0.01Au、Sn-3Bi-0.01AuおよびSAC305の糸はんだを試作し、実装基板を製造した。製造した実装基板に-40℃⇔125℃の熱衝撃を1000サイクル付与した後のクラックの発生率を評価した。その結果、Sn-3Bi-0.01AuがSAC305と同等のクラックの発生率で、Sn-2Bi-0.01AuはSAC305よりもクラックの発生率が高くなった。以上より、低価格でかつSAC305と同等以上の流動応力を有し、熱衝撃試験後のクラックの発生率がSAC305と同等のSn-3Bi-0.01Auを開発することができた。
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