研究実績の概要 |
Mo-Si-B基合金は,優れた高温強度を発揮することから,新規の超高温材料として期待されており,種々の添加元素により材料特性の改善を図る研究が進められている.しかし,添加元素種の多種化に伴い非化学量論性や溶質元素の影響は無視出来ないレベルにあり,各構成相の単相の物性値だけでは材料特性の解析が困難な状況である. 本研究では,Mo5SiB2(T2)相のSi過剰な組成に比べB過剰な組成のT2相では,室温硬度の上昇と共に高温変形時のマイクロクラック発生量の増加を見出した. これらの結果は, T2相の物理的・機械的性質に対する非化学量論性の解明とその制御が, Mo-Si-B 基超高温材料の開発に極めて重要であることを示している. さらに本研究では,Mo-Si-B複相合金中に存在するT2相から単結晶マイクロピラー微小試験片を作製し, 室温微小圧縮試験を実施することで,非化学量論T2単結晶の室温変形挙動および破壊挙動を調査した. また,複相材における各構成相の弾性率の差が小さくなるにつれて巨視的弾性率が各相の体積率の線形和に近づいていく性質とMo-Si-B合金中の弾性率が最も低いと予想されるMo固溶体相であってもヤング率は300 GPa程度と高く,強化相であるMo3Siの約340 GPaやT2相の約380 GPaと大きな差がないことを利用して,Mo-Si-B三相合金の巨視的弾性率と各構成相の体積率からの各構成相の弾性率の予測を提案した。 本研究では,組成の異なる複数のMo-Si-B合金に対して電磁超音波共鳴法によって等方弾性体を仮定した巨視的弾性率を測定し,体積率と複合則に基づいて各構成相の弾性率を見積ることの妥当性を検討するとともに,変形応力, 破壊応力および弾性率等のT2相の各種物性に関する非化学量論組成の影響を調査した.
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