研究実績の概要 |
平成28年度の目標は疲労起点部とその進展方向を明確にすることである。試験片のサブクラックや破面を詳細に観察した。亜鉛めっきは3層構造をしており,それらの層の相はη相,ζ相,δ1相である。サイクル数によって疲労起点部は変化した。すなわち,低サイクル側(10000回以下)では最表面のη相が起点部であり,中サイクル(10,000~100,000回)ではζ層あるいはδ1層が起点部であり,高サイクル(100,000回以上)ではη相が起点部であった。低サイクルや高サイクルのstage II形状は楕円状であったが,中サイクルは三日月状であった。中サイクルの起点部は複数あり,めっき部をき裂進展していた。溶融亜鉛めっきした炭素鋼はいずれも炭素鋼ままよりも疲労強度が低下した。この要因はめっき部で起点が発生容易であったためと考え,η相のみを除去する表面処理を行った。η相は高サイクル側の疲労強度を低下させる要因であり,それを除去することにより疲労強度が大きくなる。しかし,η相除去材は,中サイクルの疲労強度は溶融亜鉛めっき材と差がなく,中サイクルの疲労破壊低下要因はη相にない。この結果は,破面観察から得られたζ層あるいはδ1層が起点部であることを支持する。これらの実験結果を元に溶融亜鉛めっき材の疲労破壊挙動をモデル化した。腐食疲労装置を完成させ,試験を開始した。実際に環境により疲労強度が変化することを確認した。
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