研究課題
本研究では、鉄鋼材料における損傷発達の定量的かつ統計的解析法が、BCC/BCT二相鋼の他、FCC/BCTおよびFCC/HCP二相組織の損傷発達の議論に有効であることを示した(ここで、BCTとHCP相はマルテンサイトである)。具体的には、顕微鏡による微小ボイド観察から、損傷面積率、損傷数密度、損傷平均サイズを解析することにより、全ての鉄鋼二相組織における損傷発達過程が、①損傷形成前駆過程→発生、②損傷成長停留過程、③損傷成長→破壊の三つの段階に分けられることが示唆された。水素はそれぞれの損傷発達段階において異なる機構で延性に影響を与える。つまり、複相鋼の水素脆化機構を理解するためには、この三つの段階それぞれに個別の組織解析をする必要がある。さらに、損傷形成前駆段階は局所塑性ひずみ発達によって特徴づけられる。局所塑性ひずみ発達挙動は画像相関法を用いた局所ひずみ測定により明らかとされる。この問題を詳細に明らかとするため、画像相関法による局所ひずみ観察、電子チャネリングコントラストによる損傷周辺の組織観察の手法を確立した。これら結果を総括すると、複相鋼における水素は、損傷成長のアレスト能を著しく低下させており、例え損傷が形成しても、成長を停留させれられる耐水素複相鋼の創製が望まれる。また、特に最終年度では、水素可視化技術確立に注力し、FCC/BCC鋼、FCC/HCP鋼の銀デコ―レーションによる水素分布可視化に成功した。加えて、これら結果に対応するケルビンプローブフォース顕微鏡による、より微視的でかつ時間経過依存性の情報を含む水素分布の可視化に成功した。これら結果より、水素は組織界面に顕著に偏析しており、その偏析箇所に沿って損傷発生が起こっている。将来的には、損傷のアレスト能低下の原因を明らかとするため、き裂先端の高分解能な水素可視化技術確立が望まれる。
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