研究課題/領域番号 |
15K18238
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
湯浅 元仁 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 構造材料研究部門, 研究員 (70635309)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / マグネシウム合金 / 合金設計 |
研究実績の概要 |
当該年度は高加工性マグネシウム合金設計指針の構築のため、第一原理計算を用いた基本情報の抽出を行った。申請者らのグループで見い出された、高加工性マグネシウム合金に特徴的であるTD-split textureの形成されやすい合金系を対象とした。具体的には、Mg-Zn-Sr合金を対象として、1.合金モデル作成、2.各種すべり系(底面・柱面すべり)の活動しやすさの評価、3.すべり変形のしやすさと電子状態の関係の導出、を通じて高加工性マグネシウム合金に特徴的であるTD-split textureが形成される合金の電子状態を抽出した。 その結果、Mg-Zn-Sr合金モデルは、以前申請者が実験で高加工性を確認したMg-Zn-Ca合金の計算モデルと近い電子状態となっていることが確認できた。すなわち、本来すべりにくい柱面すべりの電子密度が大きく減少しており、本来すべりやすい底面すべりに関する電子密度は、Mg-Sr2元系合金モデルよりやや上昇していた。本結果は、TD-split textureを形成する合金系は、ある特定の電子状態を有する可能性が高いことを示唆するものであり、高加工性マグネシウム合金を設計するためには該電子状態を有する添加元素を探索すればよいことを示していると言える。 ただ、計算から算出されたすべり変形のしやすさに着目すると、Mg-Zn-Sr合金モデルは、底面すべり・柱面すべりともにMg-Zn-Ca合金よりすべりやすくなっているものの、底面すべりと柱面すべりに必要なエネルギーの比(すべりの異方性の指標)については、Mg-Zn-Ca合金モデルに対して低い値となっており、すべりの異方性はMg-Zn-Ca合金モデルに劣ることがわかった。そのため、実際に合金を作製・加工性の評価を行った際には、Mg-Zn-Sr合金は、Mg-Zn-Ca合金より劣った加工性となることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mg-Zn-Y合金もTD-split textureを形成することで知られているが、今年度は計算機の使用状況上、対応できなかった。しかしながら、Mg-Zn-Sr合金モデルにおいて、TD-split textureを形成するのに特徴的な電子状態を抽出することができたといえ、研究内容自体はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、第一原理計算による高加工性Mg合金のために必要な電子状態の抽出を実施する予定であるが、申請者が研究機関を移ったため、計算ソフトウェアや計算機を一部再構築する必要がある。よって、H28年度は購入物品を一部変更する予定である。また、抽出した合金系を用いた実際の作製実験に関しては、適時前職の研究機関に協力を仰ぎつつ進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品、旅費を効率的に使用した結果生じた残額
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品、旅費などに用いる。
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