研究実績の概要 |
当該年度は高加工性マグネシウム合金設計指針の構築のため、種々のMg合金について第一原理計算による電子状態情報の収集と実際の合金作製による成形性の評価を行った。具体的には、Mg-Zn-Ba合金を対象として、1.合金モデル作成、2.各種すべり系(底面・柱面すべり)の活動しやすさの評価、3.すべり変形のしやすさと電子状態の関係の導出、を通じて高加工性マグネシウム合金に特徴的であるTD-split textureが形成される合金の電子状態を抽出した。 Mg-Zn-Va合金モデルは、以前申請者が実験で高加工性を確認したMg-Zn-Ca合金の計算モデルと近い電子状態となっていたが、その電子状態は底面すべり・柱面すべりともにMg-Zn-Ca合金モデルや前年に評価したMg-Zn-Sr合金モデルよりすべりやすくなっているものの、底面すべりと柱面すべりに必要なエネルギーの比(すべりの異方性の指標)については、Mg-Zn-Ca合金モデルに対して低い値となっており、すべりの異方性はMg-Zn-Ca、Mg-ZN-Sr合金モデルに劣ることがわかった。 実際に作製したMg-Zn-Sr, Mg-Zn-Ba合金板材は、2元系のMg-Zn合金よりも高いエリクセン値(板材の張り出し成形性の指標)を示したが、研究の出発点であるMg-Zn-Ca合金モデルよりは低い値となってしまった。このことは、第一原理計算により評価されるすべりの異方性の指標により、成形性を予測できることを意味しているものの、さらに成形性を高めるためには、より詳細に電子状態を調べ、候補元素を選定する必要があるものと考えている。 さらに、合金元素が双晶と転位の相互作用に及ぼす影響についても検討を行い、合金元素により相互作用が変化すること、またその変化の指標となるパラメータを提案した。
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